現在、円安が続いていますが、円安にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか?
イラストで解説していきます。
メリット
円安のメリットの1つ目は、観光客が増えることです。
円安の時は、海外の方にとって、日本をおトクに旅行することができます。
円安ということは、海外の方にとっては、日本の商品を安く買えるということです。
そのため、円安の時は、外国からの観光客が増えます。
もし、海外からの観光客が増えれば、日本の観光地が儲かります。
観光地が儲かれば、観光地で働いている人の収入が増えていきます。
そのため、観光客が増えることは、日本の経済に良い影響があります。
円安のメリットの2つ目は、輸出産業が儲かることです。
円安になると、輸出企業は儲かりやすくなります。
例えば、車産業などです。
なぜなら、円安になると、輸出品の外国での価格が安くなるからです。
円安になると、日本の車は、よく売れるようになります。
円安の時は、輸出品が、外国で安く売られるようになります。
その仕組みを説明します。
まず、分かりやすいように、日本製の車が100円だとします。
円高になり、例えば、1ドル=100円になったら。
アメリカ人は、1ドルで、車を1コ買うことができます。
次に、円安になり、例えば、0.5ドル=100円になったとします。
そうすると、アメリカ人は、1ドルで、車を2コ買うことができるのです。
このように、円安の時は、日本製のものが、海外で安く売れます。
また、値段が安いものはたくさん売れるので、円安の時は、輸出品がたくさん売れます。
また、普段と同じ量の商品を販売しても、得られる円が増えます。
なぜなら、稼いだドルを、より多くの円に換えることができるからです。
例えば
円高になり、1ドル=100円になったとします。
その時は、アメリカ人が、1ドルの買い物をしたら、日本円で100円の売り上げになります。
次に、円安になり、1ドル=200円になると
アメリカ人が1ドルの買い物をしたら、日本円で200円の売り上げになります。
両方とも「1ドルの買い物」なのに、円での利益の額は変わるのです。
商品を日本で生産していれば、人件費は円ベースで払うので、円安の時は、人件費を安く抑えられます。
そして、商品をドルベースで販売したら、円安の時は、普段と同じ量の商品を販売しても、利益が増えます。
そのため、円安の時は、輸出する企業が儲かるのです。
デメリット
デメリットは、輸入品が高くなることです。
円安は、輸出には有利になりますが、輸入に不利です。
円安になると、輸入しているガソリンや小麦などが高くなります。
輸入品だけでなく、輸入した材料をもとに製造する加工品も、値上がりするようになります。
輸入したものを国内で加工して販売している企業は、販売量が変わらなくても利益が減るのです。
さらに、円安の時は、物価が上がります。
日本は、いろんなものを輸入しているので、輸入品が値上がりすると、それにつられて、物価全体が値上がりしてしまうのです。
今回の円安は、このデメリットを大きく受けています。
なぜなら、現在、ロシアのウクライナ侵攻以降、原油や穀物などの価格が高くなっているからです。
もともと原油や穀物などの価格が高くなっているところに、円安が加わったので、原材料を輸入する際のコストが高くなっているのです。
メリットが薄らいだ理由
たしかに、円安には、メリットがあります。
しかし、現在の情勢では、円安のメリットは、薄らいでいると言われています。
その理由は、2つです。
1つ目に、コロナで観光業が盛り上がりづらい点です。
円安になると、観光業が儲かるようになるというメリットがあります。
しかし、新型コロナの影響で、円安になっても、海外旅行を控える人が多いです。
そのため、円安で外国人観光客の呼び込むということが期待しづらいのです。
さらにいうと、たとえ、コロナの問題が解決したとしても、円安で外国人が日本で、おトクに買い物ができるとは限りません。
なぜなら、円安になれば、輸入品が高くなるからです。
つまり、日本で旅行していても、ガソリン代や、食費が高いのです。
日本は生活に関わるほぼすべてのものを、海外からの輸入に頼っているので、ホテル代や、レストランでの食事代など、いろんなものが値上がりします。
結局のところ、円安の時でも、海外の方が日本でおトクに旅行できるわけではないのです。
2つ目に、輸出産業が、海外移転を進めている点についてです。
たしかに、円安になったら、輸出する企業が儲かるといわれています。
しかし、ここ数年の円安は、輸出数量を増やす効果を出していません。
その理由は、日本企業は、工場を日本ではなく、海外に建てるようになってきているからです。
日本企業は積極的に生産拠点の海外移転を進めています。
海外で生産した分については、直接的に為替の影響を受けません。
つまり、海外で生産したら、円安のメリットを得ないのです。
また、輸出企業は、製品のすべてを内製しているのではなく、原材料や部品を海外から輸入しています。
円安になると材料の仕入れ価格も上昇します。
なので、輸出によるメリットは、あまり大きくないのです。
このような理由により、円安のメリットは、薄らいでいると言われています。
かつては、「円安は良い」と思われていた
かつては、円安は良いと思われていました。
なぜなら、円安になれば、物価が上がるからです。
物価が上がれば、給料が上がって、景気が良くなるはずだと、考える人は、以前はたくさんいました。
しかし、今回の物価の上がり方は、「悪い物価の上がり方」なのです。
物価の上がり方は、2種類あります。
良い物価の上がり方
良い物価の上がり方とは、需要が増えたことで、物価が上がることです。
需要とは、商品を買ってくれるお客さんのことです。
商品を「買いたい」と思ってくれる人が増えると、商品の値段は高くなります。
みんなの「欲しい」という声が増えることで、物価が上がれば、それは良い物価の上がり方です。
もし、お客さんの「欲しい」という声が増えれば、企業は生産を増やします。
買い物をしたい人が多い時は、高くても売れるので、企業が儲かります。
そうして企業が儲かれば、従業員の給料が増えます。
従業員の給料が増えることは、とても大切です。
なぜなら、給料が増えると、人は「買い物したい気持ち」になるからです。
給料の上昇を伴う物価の上がり方は、良い物価の上がり方です。
悪い物価の上がり方
一方で、悪い物価の上がり方があります。
それは、原材料が値上がりして物価が上がるという物価の上がり方です。
例えば、輸入している原材料が値上がりすることで、物価が上がってしまったら、それは悪い物価の上がり方です。
今回も、輸入品が値上がりして、生産コストが増えたために、しかたなく商品の値段を上げています。
お客様が「欲しい」と思ってるわけではないのに、商品の値段が上がれば、商品は売れなくなります。
商品が売れなければ、企業が儲かりません。
そのため、給料は上がりません。
今回の物価の上昇は、給料の上昇を伴わない物価の上昇なのです。
まとめ
円安が原因で、輸入品が高くなり、悪い物価の上昇が起きています。
しかし、円安や円高は、金融政策などで、操作することも可能です。
操作をするのは日本銀行なので、これからの日本銀行の動きに、注目が集まっています。