ケインズは、ピグーから指導を受けた経済学者ですが、ピグーとは意見が対立しました。
それぞれどのような主張をしていたのか、見ていきます。
パン屋
セイの法則
ピグーは、セイの法則を信じていました。
セイの法則とは、作れば作っただけ売れるという考え方です。
なぜ、作ったら全部、売れると考えたのでしょうか?
それは、値下げをすれば良いからです。
もし、パンを1円まで値下げしたら、ぜったい売れます。
商品を安くすれば、商品は売れます。
そのため、商品が売れない時は、安くすればいいのです。
有効需要の原理
商品が安くなれば、お客さんは、商品を買いやすくなります。
物価が安くなると、短期的には、お客さんは商品をよく買ってくれるようになるかもしれません。
しかし、長期的に見ると、パンをたくさん作ったら売れ残るはずです。
たしかに、パンが1円になれば、お客さんは買ってくれるかもしれません。
しかし、それではお店が儲かりません。
ケインズは、セイの法則を否定して、有効需要の原理を主張しました。
ケインズは、パンはたくさん作ったら売れ残ると考えました。
そして、売れ残ったパンは値下げをしないと売れなくなります。
パンを売り尽くすために、価格を下げ続けるのです。
しかし、これはパン屋さんにとって損です。
パンを作れば作るだけ、その価値を下げてしまうのです。
パンを値下げするという事は、パンを作ってる人の給料も減ってしまうということです。
そのため、ケインズは、「パンを作りすぎてはいけない」と主張しました。
値下げについて
セイの法則
セイの法則では、値下げをしたら、モノが売れるようになると考えています。
なぜなら、お客さんは安い商品を買いたいからです。
有効需要の原理
有効需要の原理では、値下げをしたら、モノが売れなくなると考えています。
なぜなら、値下げをすると、お店が儲からなくなるからです。
例えば、Aさんのパン屋で、商品を値下げしたとします。
すると、Aさんのパン屋で、働く人の給料が下がります。
そして、節約を始めます。
そのため、Bさんのリンゴ屋さんが儲からなくなります。
誰かが節約をすると、その周りのお店の商品が売れなくなるのです。
売り上げ
セイの法則
セイの法則では、売り上げが下がったら、賃金を下げるべきだと考えられています。
そうすれば、安くパンが作れるからです。
賃金を安くすると、商品を作る時のコストが抑えられます。そのため、パンを安く作ることができます。
たとえば、100円ショップの従業員の給料は、最低賃金ギリギリです。
従業員の給料が低いから、商品を安く売ることができるのです。
有効需要の原理
一方で、有効需要の原理では、モノが売れない時は、パンの作る量を減らすべきだと考えられています。
パンが売れ残るのは、作り過ぎているからなのです。
パンを作りすぎると余ります。
余ったら、捨てるのがもったいなくて、夕方に値下げをするかもしれません。
そしたら、お客さんは、夕方にしか来てくれなくなります。
つまり、パン屋は、そもそもパンを作り過ぎてはいけません。
パン屋は「売れる分だけ」パンを作るべきなのです。
給料
セイの法則
不況になったら、給料が下がるのが普通だと、セイの法則では、考えられています。
なぜなら、「給料は、労働の対価」だからです。
労働者が給料をもらえるのは、労働者がモノを作ったからです。
モノの価値が下がってる時は、労働の価値も下がっています。
だから、給料も下がるはずなのです。
モノが安くなっている時に、給料の金額が変わらないなら、企業は給料を払いすぎてるということです。
そのため、不景気の時は、物価と釣り合うくらい給料を減らす必要がある、と考えました。
有効需要の原理
有効需要の原理では、給料は下げない方がいいと考えられています。
もし、労働者の給料を下げてしまうと、労働者は節約するようになります。
節約する人が増えると、お店のモノが売れなくなります。
つまり、景気が悪くなります。
そのため、給料を減らさない方が良いのです。
人々の給料を減らすと、さらに景気が悪くなります。
そのため、給料を減らしてはいけないのです。
失業問題について
セイの法則
セイの法則では、失業問題を解決するには、給料を下げればいいと考えます。
給料が下がれば、コストが抑えられて、商品を安く作れます。
商品が安くなれば、お客さんが増えて、お店が儲かります。
そうすれば、新たに人を雇う余裕が出てきます。
こうして、失業問題が解決するのです。
有効需要の原理
有効需要の原理では、失業問題を解決するには、失業者に仕事を与えれば良いと考えます。
なぜなら、失業者に仕事を与えれば、失業者は、労働者になります。
「仕事を与える」の意味は、「政府が、公共事業を行う」ということです。
公共事業とは、国がみんなのためにやる仕事です。
みんなが必要としているけど、誰も自分だけは作れないようなものを政府が代表して作るのです。
例えば、道路や鉄道をつくったり、上下水道や公園を整備したりなどです。
政府が公共事業をすると、景気が良くなります。
例えば、政府が、とある会社に「水道を作ってください」と発注をしたら、発注を受けた会社は、儲かります。
そして、儲かったお金で、労働者を雇います。
こうして、失業問題が解決するのです。
景気を良くする方法
セイの法則
セイの法則では、景気を良くするためには、物価と賃金を下げるべきだと考えられています。
仕事がある人の賃金を下げて、その分、働く時間も短くして、その分、新しい人を雇えばいいのです。
賃金を下げることで、景気が良くなるという考え方です。
有効需要の原理
一方で、有効需要の原理では、物価と賃金を上げるべきだと考えられています。
なぜなら、賃金が上がれば、お客さんがお金を持つ状態になるからです。
労働者は、お客さんでもあります。
労働者が賃金をもらうということは、お客さんがお金を持っているという状態なのです。
給料が増えたら、たくさん買い物する人が増えます。
たくさん買い物したら、お店の人の給料が増えます。
つまり、物価が上がれば、景気もよくなるのです。
また、セイの法則については、こちら↓の記事で詳しく書かさせていただきました。