レッセフェールとは「放っておけばいい」という意味です。
アダムスミスは「政府が国民にいろいろと指図しない方が、経済は上手くいく」と考えました。
どのような考え方なのか、見ていきます。
国富論
『国富論』とは、アダムスミスが書いた本です。
この本では、国を豊かにするにはどうしたらいいのかということが書かれています。
アダムスミスが考える「豊かさ」とは、1番貧しい人々が、よい良い生活になる状態のことです。
イギリスの経済学者のアダムスミスは、イギリスの最貧困層の人々の暮らしを観察して『国富論』に書きました。
当時のイギリスは、人々の給料は右肩上がりに上がっていました。
イギリスの国民も、自分たちが豊かになってることを実感していました。
1番貧しい人ですら、毛織物のコートや麻のシャツ、ベッド、ナイフ、フォーク、ガラスの窓などを持っていました。
イギリスは、国の発展のおかげで、一番貧しい人まで豊かになりました。
さらに、田舎であるスコットランドでさえ、道路が整備されていて、バターやチーズや魚を食べれるほど豊かになっていました。
アダムスミスはこれを見て「最貧困層が以前よりもまともな生活を送れるようになった」と言いました。
たしかに、イギリスには、貧富の格差はありました。
豊かな人もいれば、貧しい人もいました。
しかし、一番貧しい人でさえ、その人のおじいちゃんよりは、明らかに良い生活ができるようになったのです。
このように、アダムスミスは「一番貧しい国民の生活がより良くなるためにはどうすべきなのか?」という視点で、『国富論』という本を書きました。
イギリスとスペインを比較
アダムスミスは、当時のイギリスとスペインを比較しました。
その頃、スペインは南アメリカから金銀を盗んで国に持って帰っていました。
それでも、イギリスよりも貧しくなりました。
一方で、どんどん豊かになっていたイギリスは、南アメリカから金銀を盗んでいたわけではありませんでした。
金銀を集めてないのに豊かになれたのです。
なぜ、イギリスの国民は、豊かになれたのでしょうか?
アダムスミスは、その理由は「人々が働いたからだ」と考えました。
これを労働価値説と言います。
そして、アダムスミスは、重商主義は良くないと考えました。
重商主義とは「金銀を集めれば、豊かになれる」という考え方です。
富とは、金庫にしまっておけるような金銀ではないと、アダムスミスは考えました。
人が働いて、何かものを作るということで、富が生まれるのです。
大切なのは、人々が働いて、商品を作ることです。
人々が働いて、新しいものが世の中に増えていくから、国は豊かになっていくと、アダムスミスは考えました。
重商主義
重商主義の人は、金銀を集めることだけを頑張っていました。
海外から金銀を集める方法だけを考えていたのです。
金銀を集める方法は、輸出をたくさんすることです。
輸出をすると、金銀が国に入ってきます。
他国の金銀を減らして、自国の金銀を増やすことができます。
一方で、輸入をしたら、金銀が国外へ出て行ってしまいます。
そのため、できるだけ輸入は減らすようにしていました。
当時の政府は、金銀を集めるために、貿易に介入していました。
「介入」とは「指図をする」ということです。
輸出をたくさんすれば、自国が豊かになる一方で、他国を貧しくさせることができます。
そのため輸出を増やすための政府による介入が行われていました。
これをお互いの国がやっていたので、ヨーロッパでは金銀の争奪戦になっていました。
しかし、アダムスミスは、金銀を奪い合うのは良くないと考えました。
政府は介入しないで
アダムスミスは「政府は、介入するべきではない」と主張しました。
その理由は、「輸出を増やして、輸入は減らそう」という政府の考え方が間違っているからです。
隣国は、貿易のパートナーです。
貿易のパートナーを貧しくさせようと頑張ってしまうと、お互いに損することになります。
アダムスミスは「金銀の奪い合いに価値は無い」と考えています。
金銀を国にたくさん集めたとしても、国が豊かになるわけではありません。
大切なのは、人々が働くことです。
人々が働いて、新しい商品やものが世の中に増えていくから、国は豊かになっていく、とアダムスミスは主張しました。
レッセフェールとは
「レッセフェール」とは「政府が介入しなくても上手くいく」ということを伝えるために使う言葉です。
ある人がお金を使えば、それはまた別の人の収入になります。
例えば、イギリス人が、フランス人からワインを買ったとします。
イギリス人のAさんが払ったお金は、フランス人Bさんの収入になります。
Aさんがお金を使うと、Bさんが儲かります。
儲かるBさんは、外国人かもしれません。
しかし「外国人が儲かったら悔しいと思ってはいけない」と、アダムスミスは言います。
外国人は、いつか貿易のお客さんになる人です。
Bさんは、今回はワインを売る人ですが、次回はイギリスの商品を買ってくれるお客さんになるかもしれません。
お客さんがお金持ちになれば、イギリスの商品をたくさん買ってくれるかもしれません。
Bさんがお金持ちになることは、Aさんにとって嬉しいことです。
お客さんが豊かになることは良いことだから「隣国を貧しくさせよう」と考える重商主義は良くないとアダムスミスは考えました。
政府がやるべきことは「隣国を貧乏にさせよう」とすることではありません。
政府は何もしなくてもいいから、介入してこないでほしい、ということを伝えるために、アダムスミスは「レッセフェール」と言いました。