「貧しい人にお金を与えると怠ける」という理論が間違っている理由

貧富の格差

経済学

経済学者の多くは、人はお金をもらうと怠け者になると考えています。

なぜなら、人が働くのは、お金を手に入れるためだからです。

もし、働かなくてもお金を手に入れられるなら、働かなくなるはずなのです。

そのため、現金給付をすると、人を怠けさせてしまうので

貧しい人にお金を与えるべきではないと主張する経済学者もいます。

現実世界

しかし、現実の世界では、現金給付は、人を怠けさせるどころか、むしろ働くモチベーションを上げることが多いです。

現金給付を受けた人が働かなくなるわけではないのです。

このことに経済学者は驚いています。

なぜ生きていけるだけのお金をもらったのに働くのか?

これは、経済学では説明がつかない部分なのです。

モチベが上がる理由

現金給付をされることで、貧しい人がモチベーションを上げる理由は、なんでしょうか?

アビジット・V・バナジーとエステル・デュフロは、この理由を次のように考えました。

実際には大半の人が、生きている間は何かしらしたいと考えています。

人は、怠けることが好きなのではなく、働くことが好きなのです。

そのため、お金に余裕ができると、人々は勇気づけられ、何か新しいことをしてみよう、という気になるのです。

むしろ、ほんのわずかなお金で生きていかなければならないことの方が人間を萎縮させてしまいます。

常にお金の心配をしなければならない時は、仕事に集中できないのです。

アビジットの実験

アビジットのチームは、これを確認するために、ガーナで実験をしました。

まず参加者にバッグの作り方の講習が受けられると持ちかけ、講習を受けた人の作品をチームがかなり良い値段で買い上げます。

さらに受講者の中からランダムに選んだ女性労働者にヤギを与えます。

ヤギを育てるとなると、女性たちにとっては余計な負担になりますが、ヤギをもらった女性たちはバッグ作りにも精を出し、もらわなかった女性よりもたくさん作ってお金を稼ぎました。

ヤギをもらった女性たちは仕事も早く、品質も平均を上回ったのです。

このような結果が出た理由は、ヤギを手に入れた女性たちは、生活の心配から解放され、仕事に集中する事が出来たからではないか?と考えられています。

途上国の貧しい人たちは、まともな金融機関から融資を受けられず、生計が立ちいかなくなっても、誰も助けてくれません。

となれば、何かやりたいことがあっても、失敗が怖くてなかなか踏み切れないのです。

しかし、もし、何年かに渡って現金給付を受けられるとなれば、それが元手にもなるし、万が一失敗した時の拠り所にもなります。

「失敗しても大丈夫」という状況に身を置く方が、挑戦する意欲が湧くのです。

現金給付は意味がある

このように現金給付には、意味があります。

お金に少しの余裕ができると、貧しい人たちは、どこか新しい場所で仕事を探そうとか、新しいスキルを学ぼうとか、新しい商売を始めようという意欲が湧いてきます。

現金をもらって初めて、活気のある活動をすることができるのです。

不運に見舞われた時に路頭に迷わずに済むという点でも、新しい商売や仕事を試みる余裕ができるという点でも、現金給付には、意味があります。

途上国だけでなく、先進国でも、お金に余裕ができたからこそ、成功する人も多いです。

例えば『ハリーポッター』を書いたJ・K・ローリングは、生活保護を受け小説を書いてきました。

もし、生活保護のサポートがなければ、ハリーポッターは生まれなかったかもしれません。

ここからも分かるように、人は「お金をもらったから怠ける」という生き物ではないようです。

むしろ、お金に余裕ができることで、不安が減り、挑戦しようという気持ちにさせてくれるのです。

そして挑戦しているうちに、世の中に新しいものを生み出すのです。

 

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