労働者の方が弱い
アダムスミスは、労働者の権利を守ろうとしました。
その理由は、労働者の方が弱いからです。
人を雇っている人(経営者)と、雇われている人(労働者)の間には、力の差が存在します。
経営者の方が強くて、労働者の方が弱いのです。
労働者が自分の権利を主張するチャンスが少ないのです。
アダムスミスは、そこに問題意識がありました。
労働者の一人一人の力が弱いなら、労働者は、団結しようとします。
しかし、当時は、労働者の団結の方は、禁止されていました。
労働が団結したグループのことを、労働組合と言います。
18世紀には労働組合はまだ存在していませんでした。
一方で、経営者たちは、人数が少ないため、ずっと簡単に団結することができます。
しかも、その団結は禁止されていませんでした。
労働者は、生き延びるために日々の賃金を必要としています。
賃金がないと生きていけない人間は、交渉に弱いです。
経営者たちの方がずっと長く持ち堪えることができます。
経営者は、お金があるので、たとえ1人も職人を雇用しなくても、1〜2年は生活できるのです。
一方で、労働者は、仕事がなければ1週間と生きていけません。
本当なら、経営者も労働者も、お互いがお互いを必要としてます。
しかし、経営者にとっては、労働者がいなくても何とかなるのです。
そのため、アダムスミスは、労働者を救う方法を考えていました。
分業
アダムスミスは、分業が社会を発展させると主張しています。
しかし、分業は同時に、労働者に悪い影響を与えるとも考えていました。
なぜなら、同じ作業を何度も繰り返すと、神経を鈍磨させるからです。
だから、分業は、労働者を知的に退化させると考えていました。
簡単な仕事をずっとしていると、感情的を失い、肉体的な活力も腐らせてしまうのです。
貧しい人も繁栄するべき
アダムスミスは、貧しい労働者にも、利益が行き渡ってこそ社会は繁栄すると考えていました。
労働者たちの生活条件が改善されたら、社会にとって利益があります。
国民のほとんどを占める労働者の生活が改善されることが、社会にとって、不利益になるわけないのです。
賃金は低いままがいい?
しかし、当時の人は、貧乏な人があまり反抗的にならないようにするためには、彼らを貧乏なままにしておくのが、一番だと信じていました。
賃金が上昇して、労働者が生活に余裕が出てくると、労働者が怠け者になると考えられていたのです。
お金持ちの経営者たちは、賃金を上げると、労働者があまり働かなくなるのではないかと恐れていました。
これに対して、アダムスミスは、労働者をわざと貧しいままにさせてはいけないと主張しました。
なぜなら、病気の人より、元気な人の方がよく働けるからです。
そして、お金に余裕がある方が、労働者を活気づけて、その力を最大限の力を発揮できるようになるからです。