はじめに
アダムスミスは、重商主義は良くないと考えました。
その理由は、重商主義は人々の生活に干渉しすぎていたからです。
干渉とは
干渉とは、いろいろなルールを作り、国民の行動を規制することです。
ルールというのは、例えば、海外の商品ではなく、国内の商品が売れるようにするために、海外の商品の値段をわざと高くすることなどです。
その方法としては、海外の商品にたくさん税金をかけて、商品をわざと高くすることで、海外の商品を売れづらくするというやり方があります。
ちなみに、海外で作られた商品のことを「輸入品」と言います。
また、国内で作られた商品のことを「国産品」と言います。
お客さんは、安い商品を買います。
「輸入品か」「国産品か」に関わらず、安ければ売れるのです。
そして、商品が売れたら儲かります。
つまり、安く売れることは「良いこと」なのです。
国産品が売れた方が、国内の人が喜びます。
海外の人が喜んだら嫌だけど、国内の人が喜ぶのは嬉しいのです。
そのため「海外の商品を売れづらくするべきだ」というのが、干渉したい人たちの考え方です。
重商主義
重商主義の時代は、政府が干渉した方が、国が豊かになると考えられていました。
重商主義の時代にとっての豊かさとは「金銀が国にたくさん集まること」です。
そして、金銀は、貿易によって得ることができます。
そのため政府は、貿易に干渉していました。
つまり、たくさん海外に商品を売りつつ、海外の商品はあまり買わないようにしていたのです。
どのような規制をしたのか
どのような規制をしたのかというと、イギリスでは「フランスの商品を買わないようにする規制」がたくさんできました。
例えば、フランスのお酒をできるだけ買わないようにして、代わりにポルトガルのお酒を買ったり、イギリスでブドウを作ろうとしました。
なぜ、フランスの商品を買わないようにしていたのでしょうか?
それは、フランス人が儲けてるのを見ると、嫉妬してしまうからです。
当時のイギリスは、フランスと敵対関係にあり、たびたび戦争をしていました。
フランスが豊かになるということは、次のフランスとの戦争で「イギリスが負ける可能性が高くなる」ということです。
そのため、フランスが儲けるのは怖かったのです。
だから、フランスだけには、儲かってほしくなかったのです。
重商主義が目指したもの
重商主義の人たちは、一つの大きな会社を作ることで、他国に勝とうとしました。
例えば、オランダにも、大きな会社があります。
イギリスは、イギリスの東インド会社を大きくすることで、オランダの会社に勝とうとしたのです。
アダムスミス
一方で、アダムスミスは、重商主義を批判しました。
そして、国民には、自由に競争してもらう方がいいと考えたのです。
アダムスミスにとっての豊かさとは、生活が便利になることです。
人々がお互いに自由に貿易できる状況を作ることで、生活をさらに便利にする商品が生まれます。
政府が干渉しない方が、国が豊かになると考えたのです。
自由に競争とは?
自由に競争をするというのは、競争相手がいるという状況です。
当時は、東インド会社という大きな会社がありました。
その会社が大きすぎて、他のライバル会社が育たなかったのです。
これは、自由な状態ではなかったのです。
ここでは、「自由」と「独占」は、対義語です。
それでは、独占の何がいけないのでしょうか?
独占が危険な理由は、お金が一つの会社に集まってしまうことです。
例えば、紅茶が飲みたいと思っても、東インド会社でしか紅茶を買えないなら、みんなそこで買い物をします。
例え、紅茶の値段が高くても、そこから買うしかないのです。
もし、紅茶を売る人が意地悪で、値段をものすごく高くしたら、どうなるでしょうか?
人々は、買い物に沢山のお金を使わなければいけなくなり、みんなが貧乏になってしまうのです。
そのため、アダムスミスは、自由に競争するべきだと考えました。
つまり、東インド会社には、ライバルが必要だと考えました。
会社はライバルがいると、負けないように頑張ります。
例えば、紅茶を売ってる会社が二つあるとします。
片方のお店が紅茶を安く売っていれば、そこにお客さんが集まります。
そして、もう片方のお店は売れなくなります。
そのため、もう片方のお店も、紅茶を安く売ります。
お客さんは、安い商品を買うので、より安く売ってくれる会社から商品を買うのです。
このように、ライバルがいれば、商品は適切な価格になります。
アダムスミスは、商品を買うお客さんを守ろうとしたのです。
得意を生かす
それぞれの人が自分の得意を生かしてビジネスをした方が、全体として大きな利益を生むと、アダムスミスは考えました。
例えば、イギリスには、羊を育てるのに適した土地があります。一方で、ブドウを育てるのには、あまり適していません。
それなら、イギリスでは、羊を育てるべきなのです。
得意なことをやっていれば、自然と効率よくお金を稼げるようになります。
もし、ブドウを自国で作っていたら、余計にお金がかかります。
海外から買った方が安い時は、海外から買うべきなのです。
分業
アダムスミスは、分業をすると、効率よく商品を作ることができると考えました。
例えば、一人でピンを全部つくるより、針金を切断する担当や、針金を引き伸ばす担当や、頭をつける担当に分かれる方がいいのです。
なぜなら、それぞれに必要な能力を磨くことができるからです。
一人で全ての工程を行なっていたら、オールマイティな能力が必要です。
しかし、役割分担をすると、自分の担当の能力に特化することができるので、より早いスピードで仕事を終わらせられるようになるのです。
利己心
社会に分業が行き渡ると、より豊かになります。
商品が余るくらいたくさん作れるので、人は利己心を持つようになります。
「もっとお金持ちになりたい」などの欲求が、働くエネルギーになるのです。
国家が干渉しなくても、国民はそれぞれ勝手に頑張るのです。
そして、それぞれが自分の利益のために頑張っているのに、結果的に国を豊かにすることができます。
スミスは人々が自分の利益しか考えていない国民が、経済秩序を作る様子を「見えざる手」の働きと呼びました。