世界のすごいお金持ちは、その人の能力が高いからお金持ちになったのでしょうか?
トマピケティは、個人の能力と給料が比例しているのかを論点にあげました。
また、お金持ちがお金を持っているのは、世襲型資本主義のおかげであり、個人の能力が高いわけではない、と結論づけました。
なぜそのように考えたのか、見ていきます。
成功は、能力のおかげなのか?
世界には、すごいお金持ちがたくさんいます。
世界のすごいお金持ちは、その人の能力が高いからお金持ちになったのでしょうか?
つまり、能力が高ければ高いほど、給料をもらえるのでしょうか?
また、貧しい人は、無能だから、給料が低いのでしょうか?
ピケティは、そのようなものに疑問を持ちました。
アメリカでは、お金持ちが、さらにお金持ちになる傾向が続いています。
ピケティいわく、アメリカの上位1%の富裕層は、所得が増大し続けています。
つまり、富裕層がどんどんお金持ちになってるということです。
しかし、富裕層がどんどんお金を得ていくのは、その人の能力のおかげなのでしょうか。
ピケティの意見を見ていきます。
アメリカの貧富の格差が広がった理由1
アメリカの貧富の格差が広がった理由の一つ目は、スーパーマネージャーの登場であると、ピケティは考えます。
スーパーマネージャーとは、非常に高い所得を得る人たちのことです。
大企業の重役で、仕事の対価として歴史的にも前例のないような大量のお金をもらう人たちのことです。
一般的に大企業の経営者の給料は報酬委員会が決定します。
その委員を務めるのも大企業の経営者です。
自分達で自分達の給料を決めるような構造になっています。
つまり、自分の給料を自分で決めれる人々に世界の富のほとんどが集中しているのです。
しかし、スーパーマネージャーには、その給料に見合うほど、高収益をあげた(会社を儲けさせた)人は、ほとんどいません。
つまり、スーパーマネージャーは、優秀だったからお金を稼いだ、というわけではないのです。
会社が大きいと、必然的にスーパーマネージャーの給料は高くなります。
大きな企業には、たいてい何人も超お金持ちがいます。
その何人ものスーパーマネージャーの人が「全員優秀だった」というわけではなくて、大きい企業で働いていれば、給料は高くなるということです。
最上の大富豪のほとんどは、こうした、スーパーマネージャーです
一般的にいうと、歌手や俳優のようなスーパースターの方がお金を稼いでいるイメージがあります。
しかし、新しいアメリカの不平等の主役は、スーパースターではなく、スーパーマネージャーなのです
アメリカの貧富の格差が広がった理由2
ピケティが挙げてるアメリカの貧富の格差が広がった理由の一番大きなものは、遺産相続です。
遺産とは、親が亡くなった時に、子どもに受け継がれるお金のことです。
お金持ちの子は、多くの財産を親から相続します。
今でも遺産は貯蓄より大きいです。
つまり、1人の人間が働いて貯金するお金と、お金持ちの親から受け継ぐお金の量を比べると
お金持ちの親から受け継ぐお金の量の方が多いのです。
これを「不等式r>g」で表します。
これは、過去の遺産の収益が労働所得より大きいことを示しています。
つまり、どんなにお金を稼いで貯金をしても、親から財産を受け継いだ人には敵わないのです。
先進国で人口が減少すると、子ども1人あたりの遺産相続は大きくなり、拡大するかもしれません。
兄弟が多ければ、遺産を兄弟で山分けすることになりますが、一人っ子の場合は、遺産を独り占めできるのです。
また、お金持ちの人は、専門のファンドマネジャーを雇うことができ、多くのリスクを取ることができます。
お金持ちは、リスクが取れるので、どんどん挑戦します。
たくさんのお金を持ってると、お金を運用してくれる担当者がたくさんいるので、継続的に収益をあげることができます。
これが、お金持ちの人が、さらにお金持ちになる理由です。
労働者人口の移動
アメリカの貧富の格差が広がった理由について話すと、お金持ちの人たちは、「労働人口の移動」というものを挙げます。
移動というのは、転職するということです。
今の時代、転職がしやすくなって、より良い給料のために、仕事を変えやすくなりました。
そのため、「無能と有能の格差が開いた」と主張する人がいます。
しかし、労働者の平均賃金を個人レベルで長期間に渡って比べても、すべての産業で同じように格差が拡大しています。
つまり、自動車工事で働く労働者は、どれほど時間がたっても経営者になれないのです。
労働者は、いつまでたっても労働者であり、階級格差は固定されているのです。
世襲型資本主義
世襲というのは、親から子どもに受け継ぐということです。
現在は、財産を世襲する人が有利になる世襲型資本主義という形になっています。
今の世界は、お金持ちがさらに、お金持ちになりやすいのです。
お金持ちがさらに、お金持ちになりやすい理由は、累進課税制度が穏やかになっているからです。
累進課税が穏やかになると、高所得者に有利になるのです。
すると、世襲の力が強くなります。
累進課税制度が緩やかになったおかげで、お金持ちが、さらにお金持ちになることができるのです。
そして、その財産は、子どもに引き継がれるのです。
反論
この話に対しての反論としては、「お金持ちの人も努力をしてるはずだ」というものがあります。
たしかに、それは正しいです。
お金持ちの人たちは、最初は努力をして、給料を増やしています。
しかし、ある程度お金が貯まると、努力をしなくてもお金が増えるようになるのです。
その理由は、資産家になるからです。
資産家というのは、お金(資産)をたくさん持ってる人のことです。
ピケティによれば、働いてお金を稼ぐより、資産家としてお金を稼ぐ方が、たくさんお金を増やすことができます。
お金持ちの人は、働いて給料を稼ぐのではなくて、資産家だからお金が集まってくるという形に変わっていくのです。
そして、その人に子どもが生まれると、財産は相続されます。
財産が相続されると、子どもは、働かずにお金を得ます。
子どもは不労所得だけを得るという、世襲制が作られるのです。
はじめは、お金持ちの人も、努力によって、お金を稼いでいます。
しかし、だんだん「資産家だから」お金が勝手に集まってくるようになるのです。
そのため、ピケティは、お金持ちの人から、より多くのお金を税金として集めるべきだと、主張しました。