トリクルダウンとは
トリクルダウン理論とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とする理論です。
トリクルダウンが起きる理由は、お金持ちの人は、たくさん買い物をしてくれるからです。
誰かが買い物をすれば、誰かが儲かります。
だから、お金持ちがさらにお金持ちになれば、貧しい人にも富が行き渡ると考えられているのです。
トリクルダウンは存在するのか?
それでは、トリクルダウンは存在するのでしょうか?
お金持ちがさらにお金持ちになった時代のデータを見れば、トリクルダウンが存在するのかどうかを知ることができるはずです。
そこで、今回はアメリカに注目して、最裕福層1%の所得が国民総所得に占める割合が増えた時代を振り返ります。
トマ・ピケティとエマニュエル・サエズによると、最裕福層1%の所得が国民総所得に占める割合は、1979年以降は、増え始めています。
しかし、同時期の1980年頃から、教育水準の低い労働者の賃金上昇は止まってしまっています。
しかも、教育水準が最も低い労働者だけを取り出すと、1979年から今日までの実質賃金は下がっています。
ここまでのデータを見ると、お金持ちがさらにお金持ちになるほど、貧しい人は、さらに貧しくなると考えることができます。
トリクルダウン効果が本当にあるなら、お金持ちがさらにお金持ちになったタイミングで、貧しい人もお金を持つようになったはずです。
しかし、実際には、トリクルダウンは起きなかったのです。
なぜトリクルダウンが存在しないのか
それでは、なぜトリクルダウンが起きなかったのでしょうか?
トリクルダウンが存在しない理由は、労働分配率が下がり続けているからです。
労働分配率とは、生産された付加価値のうち労働者が賃金として受け取る比率のことです。
労働分配率は、1980年から、ずっと下がり続けています。
会社が儲かっても、労働者がもらうお金の量は増えないのです。
人々が買い物をしたら、会社は儲かりますが、その売り上げは会社が吸収するだけなので、労働者が恩恵を受けるわけではないのです。
だから、お金持ちが買い物をしても、貧しい労働者に恩恵が行き渡ることはないのです。
最後に
最低賃金で働いている労働者が、十分にお金をもらうためには、最低賃金が高くなることが必要です。
いくら、買い物する人が増えても、最低賃金が低いままなら、貧しい人に富が行き渡ることはないのです。