植物は、人が育ててなくても、勝手に育っていきます。
それと同じように、経済も、政府が育ててなくても、勝手に育っていくと、ハイエクは考えました。
どんな考え方だったのか詳しく見ていきます。
ハイエクの考え方
ハイエクは「政府はルールを作る必要はない」と主張しました。
ハイエクは、経済を植物にたとえました。
植物は、人が育ててなくても、勝手に育っていきます。
自生する植物のように、経済も、政府がお世話しなくても、勝手に秩序が育っていくものだと考えました。

「むしろ、政府は秩序を作ることはできない」と主張しました。
人は、ルールに従って生きてます。
しかし、そのルールとは、慣習として自生してくるものです。
政府の人が、考えて作るものではない、とハイエクは考えました。

社会の変化と共に、ルールも変化します。
そのため、人々に自由に競走させていれば、自然とルールや秩序が生まれます。
そのため、政府が干渉する必要はない、というのがハイエクの意見です。

ハイエクの考え方は、ケインズの考え方と異なっています。
どのように異なるのでしょうか?
ケインズの考え方
まず、ケインズの考え方について紹介します。
ケインズとは「景気が悪い時は、国民がお金を保 持つべきだ」と考えました。
お客さんがお金を持っていれば、買い物をする人が増えて、お店が儲かります。
そのため「国民にお金を与えるべきだ」と主張しました。

ケインズ経済学は、すぐに人気になりました。
政府家は、ケインズ経済学を根拠に、国民にお金をバラまくようになりました。
国民にお金を配る政治家は、国民から人気になります。
国民にお金をバラまく活動に対して、理由を与えてくれるので、多くの政治家はケインズ経済学に従いました。

選挙によって政治家が決まる社会においては、ケインズ経済学は、都合の良い理論でした。
ケインズに反対
なぜ、ハイエクは、ケインズのやり方に反対したのでしょうか?
ケインズ経済学とは、短期的に経済を立て直すチカラしかありません。
効果があるのは、3年〜5年程度です。短期の応急処置にすぎません。
日本のように30年間も不況が続く状況には、あまり効果がないやり方です。

ケインズ経済学は、やりすぎると、景気が悪くなる可能性もあります。
なぜなら、未来への不安が増えるからです。
政治家がお金をバラまくのが、ケインズ経済学です。
しかし、そのバラまくお金とは、もとはといえば金です。
つまり、国民から集めたお金です。

今、お金をバラまくけど、後で増税して、もっとたくさんの税金を集めようと、政府は考えています。
未来の子どもたちが、膨大な税金を納めるのです。
現在の日本には1000兆円の赤字がありますが、これは、未来の私たちが税金として納めるお金です。
そう考えると、国民は未来に不安を感じます。
人は、不安を感じると、貯金をするようになります。
貯金をする人が多いと、お店が儲からないので、景気が良くならないのです。
不況の原因
ケインズは「不況の原因は、国民にお金がないからだ」と考えました。
しかし、ハイエクは違います。
不況の原因は、ルールが多すぎるからです。
生産性が高まるような成長産業が全く生まれていないから、経済が回復しないのです。

そして、成長産業が生まれないのは、色んな規制が生産性の向上を阻んでいるからだと、ハイエクは考えます。
たとえ、景気を良くするために、国民にお金をバラまいたところで、お金持ちになった気がするのは、一瞬です。
「今お金もらった分、将来の税金が増えるのだ」と考えれば、国民は未来に不安を感じます。
穴を掘って埋める
ケインズは「穴を掘って、穴を埋める」というような仕事もさせた方が良いと考えました。
穴を掘る仕事をすれば、国民に給料を与えることができます。
国民にお金を与えること、そのものが大事だとケインズは考えていました。

ケインズは「どんな仕事をするか?」は気にしませんでした。
「国民に給料を与えることが大事だ」と考えていました。
一方で、ハイエクは、そんなやり方に反対しました。
穴を掘って埋める仕事は、生産性がないからです。
国民に公共事業をさせて、給料を与えたとしても、そもそも、そのお金は、税金です。

穴を掘って埋めるという公共事業をさせたら、税金が無駄に使われることになります。
そのため、ハイエクは、生産性のない仕事をさせるべきではないと考えました。

お金をたくさん持ってる人は、税金をたくさん納める必要があります。
本来なら、そのお金を、もっと有意義な何かに使えたかもしれません。
しかし、政府に勝手に税金を回収されて、そのお金で「穴を掘って埋める」ようなことにお金を使われたら、残念です。
もっと税金が低かったら、未来の経済成長のために、そのお金を使えるからです。

成長産業が生まれるためには、お金が必要です。
お金をバラまいてるせいで、成長産業が生まれづらくなっているのなら、残念です。

ケインズ経済は万能ではない
ケインズ経済学は、世界恐慌の時のような「超・大ピンチ」の時に使う処方箋です。
短期間で、みんなが仕事をしてる状態を作ります。
しかし、この状況は、とても不安定です。
こうやって税金を乱用することで「みんなが働けている状態」を無理やり作ることは良くない、とハイエクは考えます。

ケインズ経済学では、生産性のない公共事業にお金が使われる事も多いです。
「みんなが働けていれば良い」という目標を目指したものです。
しかし、ハイエクは「産業の成長のために資源を使うべきだ」と考えています。
ハイエクは、ケインズの考える金融政策は、ほとんど成功する見込みのない、ヤケクソの苦し紛れの短期決戦だと考えました。
お客さんがお金を持っていれば、経済が回るのではありません。
企業が成長することで、経済は回復していくのです。

アフリカが貧しいなら、それはアフリカ人がお金を持っていないからではなくて、人気の企業がないから(生産するための知識と資本がないから)なのです。
日本が成長していないのは、ルールが多すぎて、新しい生産知識を獲得することや、産業を起こすことが難しくなっているからだ、ということです。