バングラデシュは、ラナプラザ崩壊事故後はどう変わったのか?

異文化理解
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私は2019〜2020年の1年弱、バングラデシュに滞在し、そのうちの3ヶ月はシャバールにある革製品工場でインターンをしました。

2019年時点のバングラデシュの状況について書きます。

ファストファッションへの対応

ファストファッションは、2000年頃から先進国で流行りました。

しかし、安い服を追求するあまり、ラナ・プラザの悲劇が起きました。

ラナ・プラザの悲劇とは、2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカのシャバールで、商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊した事故のことです。

私は、この悲劇のことを「ラナ・プラザ崩壊事故」と呼んでいたのですが、バングラデシュ人に「あれは、事故じゃなくて人災だ」と教わったため「ラナ・プラザの悲劇」という言い回しを使うことにします。

私は、シャバールの工場で、インターンをしていた時に、現地の方々にインタビューをしました。

現地の方々は、溢れる怒りを抑えながらインタビューに答えてくれました。

日本では、「ラナ・プラザの悲劇」が有名ですが、バングラデシュでは、ラナ・プラザだけでなく、縫製品工場のビルが崩壊する事故が相次いでいだそうです。

インタビューに答えてくれた方は、バングラデシュの言語であるベンガル語でYouTubeを検索し、ビルから人を救出する動画を見せてくれました。

動画の中では、ビルの中から死体が掘り出される様子が映されており、お互い抱き合って亡くなっている姿もありました。

このような事故が相次いでいた中で、ラナ・プラザの悲劇は、『the ture cost』という映画をきっかけに、世界中で有名になりました。

そして、日本やイタリアを始めとした先進国の消費者からの国際的圧力がかかり、労働環境が見直されたそうです。

具体的に言うと、ほぼ全ての工場に、消化器・煙探知機・非常口のランプが設置されることになりました。

私が働いていた工場にも、この3つはありました。

労働環境については、改善の余地が在りますが、非常事態への対応がされたことは前進だと思います。

国際圧力というのは、大きな力を持っているようです。

バングラデシュにおける貧困

貧困線以下の生活水準で暮らす人々は、2000年の時は国民の48.9%に達していた。

2010年では、31.5%まで改善している。

1990年から2010年までの年平均経済成長率は5.3%を記録。

一人当たりのGDPも2倍になった。

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

バングラデシュは、経済的に急成長しています。

なぜ、バングラデシュはそんなにも急成長することができたのでしょうか?

それは、中国から衣料品製造のバングラデシュ移転の動きがあり、バングラデシュの縫製業を盛り上げたことが理由としてありそうです。

バングラデシュは、1992/93年には、縫製品が52.1%を占めるようになった。

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

バングラデシュは、中国に次ぐ第2位の衣料品の輸出大国です。

実際に、私がバングラデシュの工場で働いていた時も、日本人の取引先に「値下げしてくれないなら、バングラデシュと取引する意味がない。中国より安いからバングラデシュと取引してるだけだ」という言葉を言われたことがあります。

相手がソーシャルビジネスを謳ってる企業だったこともあり、余計に印象に残りました。

最低賃金

たしかに、バングラデシュの縫製業が伸びた理由は、人件費が安いおかげです。

しかし、そんなバングラデシュも、最低賃金は上昇しています。

バングラデシュでは、2018年に行われた総選挙前に、縫製業で働くワーカーの最低賃金が5,300タカから8,000タカに引き上げられた。

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

実際に、私が働いていた工場で働いていた労働者も、月に8000タカもらっていると言っていました。(2019年時点)

また、バングラデシュは、最低賃金に関して、ストライキもたびたび起きているそうです。

バングラデシュは、物価がガンガン上がっているため、最低賃金も上がらないと、生活ができなくなるようです。

2018/19年賃金指数(1969/70=100)は、11,978に達し、2014/15年からの5年間28.7%の上昇を記録している

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

最低賃金が高くなると、国が全体的に活気づきます。

私がダッカのタンモンディにて、バングラデシュ人学生8人に「未来は明るいと思うか?」と質問した時

満場一致で「明るいに決まっている」と返ってきたことがありました。

国全体の賃金が上昇していると「今は貧しくても、未来は明るい」と言った希望を感じることができるのかもしれません。

失業率

2016/17年の失業率は平均4.2%

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

日本の失業率は2%〜3%ほどなので、バングラデシュは、日本よりも失業率が高いです。

この理由を、ダッカの大学に通うバングラデシュ人に聞いたところ、バングラデシュの人口が増えた割には、仕事が増えてないためだと言っていました。

バングラデシュは、大卒の場合は、どのポストも倍率が高く、仕事を見つけるのが大変だそうです。

また、日本では、大学四年生の時に就職活動をしますが、バングラデシュでは、大学を卒業した後に就職活動をするそうです。

そして、仕事が見つかり次第働き出すそうです。

そのため、仕事が見つかるまで食いつなぐことができるかどうかが、死活問題となっているそうです。

もし、ダッカで仲間とシェアハウスをしながら仕事を探し、見つからなければ、田舎に戻って農業や小売店を継ぐと教えてくれました。

男女平等に向けて

労働人口の男女比は、7:3である。

就業者数は、2010年〜2020年にかけて男性は6.3%伸び、女性は14.8%伸びた。

出典:ARCレポートー経済・貿易・産業報告書ーバングラデシュ|ARC国別情勢研究会

女性の伸びが男性を上回っており、女性の社会進出が進んでいるのが分かります。

この背景としては、衣料産業の活発化による女性の就業機会が増えたことがあるそうです。

私の働いていた工場でも、半分近くが女性であり、遠慮せずに男性と同じように働いている様子から、女性が社会進出してることを感じることができました。

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