ベーシックインカムとは、政府が国民に、定期的にお金を給付する制度のことです。
いろんな人がベーシックインカム(負の所得税)に賛成しています。
そのうちの1人はフリードマンです。
どうしてベーシックインカムに賛成したのか、みていきます。
フリードマン
フリードマンとは、新自由主義者の経済学者です。
新自由主義では「自由」を大切にします。
人々が自由に挑戦する社会を作るためには、ベーシックインカムが必要です。
なぜなら、失敗したら生きていけないような社会では、自由に挑戦すること自体が難しいからです。

格差はない方がいい
経済学では、貧富の差はない方がいいと考えます。
そのため、格差がなくなる方法を探っていくのも、経済学の目的の一つです。
経済学が生まれる前は、格差があった方ががんばって働くという考え方もありました。
しかし、これは間違っていると、アダム・スミスは言いました。
アダム・スミスとは「経済学の父」と呼ばれるイギリスの経済学者です。
彼は『国富論』という本で「病気の人より健康の人の方が元気に働けるから、経済成長のためには、貧困を減らすことが大事である」という主張をしています。
元気に働く人が多い国の方が早く成長します。
貧困を減らすことで、全員が恩恵を受けるのです。

失敗は自己責任
貧困はない方がいいです。
とはいえ、失敗は自己責任であると、フリードマンは考えます。
そうしないと、テキトーに挑戦してしまう人が増えてしまうからです。
または、国民に失敗させないように、政府がガチガチに監視するようになってしまうかもしれません。
たしかに、マルクスのように結果の平等を目指した経済学者もいます。
結果の平等とは「頑張って起業して成功したAさんも、何もしてないBさんも、起業に失敗したCさんも、みんな同じ金額の収入が手に入る」みたいな社会です。

かつては、このやり方を導入した国もあります。
しかし、国民が失敗しないように、政府があらゆる判断を独占するようになりました。
そして、人々を抑えつけるようなやり方をしたため、なかなか自由に挑戦できる環境ではなくなってしまいました。
政治が権力を独占すると、国民の自由が奪われてしまってよくないのです。

人生にリスクはある
例えば、起業したら、成功してお金持ちになるかもしれませんし、失敗して貧乏になるかもしれません。
この失敗する自由があることが大事であると、フリードマンは考えています。
じゃないと、失敗させないために政府が口を出してくるようになるからです。
しかし、政府がビジネスに口出しするのは良くありません。
起業する時、その業界についての情報は、本人が一番よく分かっています。
だから、本人に自由に決めさせるのが大事です。

しかし、挑戦したら、失敗する可能性があります。
責任を本人が取る社会にしないといけないとフリードマンは考えます。
自分で責任を取るというのは、例えば、失敗して貧しくなってしまったら、節約して生きていく必要があるということです。
そうしないと、人々は真剣に考えずにお金をどんどん使って、リスクのある挑戦をしすぎてしまいます。
失敗を自分で償う仕組みにしないと、本気で挑戦しなくなるのです。

とはいえ「失敗したくないから挑戦しない」という人が増え過ぎても困ります。
そこで、ベーシックインカムが必要になります。
失敗しても餓死することはないという社会にすれば、リスクのあることをしやすくなります。
失敗は自己責任だけど、飢えて死ぬことはない社会を、フリードマンは目指しました。

一律に給付
給付とは「お金を与える」「お金を渡す」という意味です。
フリードマンは、お金を必要としてる人に「一律に」給付することが大事であると考えています。
年齢や職業に関係なく、みんなに同じ金額のお金を与えるべきということです。
フリードマンが「良くない」と考えているのは、相手の事情を聞いて、個別の事情ごとに、バラバラな金額を配るというやり方です。

行政の担当者が、性格が良いとは、限りませんし、頭がいいとは限りません。
相手のニーズや、相手がどれほど困っているかを正確に汲み取るチカラもないかもしれません。
このように「担当者のさじ加減」で、もらえる金額にバラつきが出るようなやり方ではダメなのです。
担当者に任せるのではなくて、ただ一律に給付する方がいいと、フリードマンは言いました。

賛成意見1
次に、ベーシックインカムへの賛成意見をみていきます。
一つ目は、ベーシックインカムがあれば、挑戦する人が増える、という意見です。
ちょっと失敗しただけで、すぐ飢えて死んでしまう社会では、誰も挑戦をしなくなります。
いろんな人がリスクのある挑戦ができる社会にするためには、ベーシックインカムが必要なのです。
賛成意見2
二つ目は、裁量の余地がなくなるからです。
裁量とは、人が頭で考えて(当てずっぽうに)決めるという意味です。
現状では、行政の担当者が誰を助けるのかを裁量で決めています。
例えば、本当にお金に困っている人を「貧しいフリをしてるだけだ」と誤解して、追い返してしまったりしています。
そうしてしまうと、人が餓死したり、自殺したり、悲惨な人生になってしまいます。
こんな現状では、お金に困っている人は、担当者に、媚を売るしかありません。
これでは、役所が腐敗していく可能性があります。
腐敗とは「上の人の性格が悪くなっていく」というニュアンスの言葉です。

誰を助けるのかを、担当者の気分次第で決めてしまうのは、良くありません。
そのためフリードマンは、国民に、一律で同じ金額を配ることを提案しました。
反論1
ベーシックインカムに反対する人は、2パターンあります。
一つ目は「働けるのに働かない人にまでお金を配ることになるかもしれない」というものです。
お金を配っても、パチンコに使われてしまったら困ります。
そのため、行政の担当者がチェックすることが必要なのであるという意見です。
しかし、本当に働けないのかどうかは、他人の目で簡単に判断できることではありません。

反論2
二つ目の反論は、そのベーシックインカムの金額だけでは足りない人も出てくるというものです。
例えば、子どもがいる家庭や、親の介護がある家庭などです。
人一倍苦労してる人には、人一倍お金を与えるべきという考え方です。
そのため、行政の担当者が、一人一人の事情を聞き、助けが必要な人を見分ける必要があると主張する人もいます。
しかし、行政の担当者が全員が善人とは限りません。
「なんとなく」で、判断しているのが現状です。
「こぼれ落ちる人を、一人ひとり観察して、適切に助けてあげる」というのは、そもそも無理な話なのです。
予想しやすい社会
フリードマンは「未来が予想しやすい社会」を作った方が良いと考えています。
例えば、起業しようと思っている時は、万が一、会社が倒産した場合を考えます。
その時に「役所に行けばこれくらいの金額をもらえるだろう」と予想できる方が挑戦しやすくなります。
現状の生活保護では、行政の担当者の裁量でもらえる金額にバラつきがあるので、「役所に行けばいくらもらえる」というのが予想しづらいです。
そのため、フリードマンは「一律に」お金を給付するべきだと考えました。
負の所得税を導入が始まらない理由
また、フリードマンは、負の所得税を導入するまでには、人の善意が必要であると言っています。
負の所得税とは、お金がある人からお金を集め、ない人へ与える仕組みです。
そのため、お金を受け取る側の人が、これに賛成します。
フリードマンは、お金を受け取る人も選挙権を持ち続けるべきかどうかで悩んでいます。
なぜなら、イギリスでは、年金を受け取る人が議会で多数派になり、お金持ちから奪って困ってる人に与えるタイプの税金がとても増えてしまったからです。
負の所得税を導入するためには、裕福層には善意が必要です。
また、貧困層には自制が必要です。「怠けたいからベーシックインカムに賛成」というスタンスではいけません。
リスクのあることにも挑戦しやすい社会にするためのベーシックインカムなのです。