倫理観が強いことは、良いことです。
しかし、時には、倫理観が強すぎて、人から敬遠されてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、倫理観について、ジョン・スチュアート・ミルが『自由論』で述べた内容について、見ていきます。
倫理観が強い人の特徴
倫理観が強いというのは、「これが正しい」という感情が強い状態です。
しかし、ミルいわく、慣習的なものを重視しすぎると、精神そのものが縛られてしまうのだそうです。
ミルの考え
しかし、ミルは、人々の判断基準なんて、結局「自分自身の好み」に過ぎないと言いました。
人はみんな、公平な倫理観で、物事を判断してると思いこんでいます。
しかし、「なぜ、その意見が正しいのか」を説明できないのであれば
それは、「好み」が判断基準になってしまっているということなのだと、ミルは言います。
️倫理観が強いデメリット
倫理観が強いことのデメリットは、自分の選択肢を狭めてしまうことです。
ミルは、人は、下記のように自問するべきだとと言います。
・何が私の好んでいるものなのか?
・何が私の性格や気質に合っているのだろうか
・何が私の中にあるものを引き出してくれるだろうか?
・何が私を育ててくれるだろうか?
しかし、世の中の人々は、このように自問するのだそうです。
・何が私の地位にふさわしいのだろうか?
・私と同じ地位や収入のある人々は、ふつうは何をしてるのであろうか?
慣習的なもの以外に何か好みを持つということが、人々の頭には浮かばなくなってしまっていると、ミルは言います。
そのようにして、精神そのものが縛られてしまっているのだそうです。
個性は素晴らしい
『自由論』では、もっと個性を磨いていこうと言う主張がされています。
なぜなら、個性が磨かれれば、人の生活は、豊かで多様なものとなるからです。
個性が磨かれると、それぞれの人間にいっそう充実したた生命が宿ります。
そして、一人一人が充実すると、社会全体も発展するのです。
今の世の中
ミルは、今の世の中は、本性が衰退してきていると、危機感を抱いています。
娯楽のために何かする時でさえ、人々が最初に考えるのは、他人に合わせることです。
大勢の人々に好まれるものが、自分の好きなものなのです。
何かを選ぶにしても、一般に行われていることの中からしか選ばない、とミルは言います。
珍しい趣味を持つことは、犯罪同然に遠ざけられます。
このようにして、自分の本性に従わないことで、従うべき本性がなくなってしまう。
こんな社会では、人間的な能力は、衰退し、貧弱になっていくのだと、ミルは主張します。
人々は、強力な願望を持つことも、自然な楽しみを感じることもできなくなっているのだそうです。