共有地の悲劇
共有地の悲劇は、みんなで何かをシェアしてるときに起きるトラブルです。
この言葉が生み出されたのは、昔のイギリスです。
当時、あるところに羊飼いがいました。
羊は、草を食べます。
そのため、それぞれの羊飼いは、共有地の草を羊に食べさせました。
すると、草がなくなってしまったのです。
このお話の注目すべき点は、草という資源が「みんな使える状態だった」ということです。
みんなが使える資源は、誰もが我先に、と取りに行きます。
その結果、資源がなくなってしまい、みんなが損をしてしまうのです。
じゃあ、資源を大切にするように、約束したらいいんじゃない?
ここで「みんなで大切に使いましょうね」と口約束をしたとしても、自分だけ裏切って利益をかすめとろうとする人が現れてしまいます。
みんながルールを守れば、みんなが利益を得ることができるのに、裏切られる前に、裏切ろうとすることで、みんなが損をしてしまうのです。
みんなが使うもののことを公共財といいます。
公共財では、共有地の悲劇が起きます。
公共財とは、公園や道路や消防、警察など、みんなで共有してるものを公共財といいます
公共財の特徴
公共財は、「非競合性」と「排除不可能性」の2つのうち、少なくてもどちらか1つの特徴を持っています。
非競合性
非競合性とは、不特定多数の人が同時に利用できるという特性です。
つまり、ある人の消費によって他の人の消費が妨げられないという意味です。
例えば、道路は、1人しか歩いていなくても、たくさんの人が歩いていても、それぞれの人が利用できる部分が増えたり減ったりしません。
ある人の消費が増加しても、それによって他人の消費が減少しない状況をいいます。
排除不可能性
排除不可能性とは、対価を支払わない人を排除できないという意味です。
例えば、大学の寮で、みんなで掃除しているキッチンがあって、掃除に参加しない人がいても、その人にキッチンを使わせないようにすることはできません。
ある特定の人を、受益に見合った負担をしていないからといって、排除することはできないのです。
ある人にだけ使えないようにすることができないことを、排除不可能性といいます。
公共財の問題点
公共財の問題点は、ただ乗りする人がいることです。
ただ乗りとは、他人に公共財の負担を押し付けることです。
ただ乗りするズルい人のことを、フリーライダーと言います。
公共財は、ズルい人だけを排除することができないので、フリーライダーがでないようにするのは、難しいです。
負の公共財
公共財とは、次世代に利益をもたらす様々なインフラを指します。
負の公共財とは、その逆で、様々な害をもたらす物です。
例えば、廃棄物、温暖化物質、などです。
温暖化物質は、次世代の長期に渡って、海面上昇、異常気象など多くの負荷を強います。
このように、自由な経済活動に任せた結果、みんなが損する結果になってしまったことを、市場の失敗と言います。
市場の失敗
市場の失敗 とは、市場メカニズムが働いた結果において、最適ではない状態になってしまったことを指します。
市場メカリズムとは、「みんなが利己的に動いても、みんなが幸せになる」みたいな意味です。
古典派経済学者は、人は、利己的に働いたらいいと考えています。
なぜなら、市場メカニズムがあるので、だいたいのことは上手くいくからです。
しかし、市場メカニズムにも、デメリットがあります。
それが、市場の失敗が起きてしまうことです。
市場の失敗のひとつが、外部性です。
外部性とは
「外部性」とは、誰かの行動が、まったく関係のない第三者に影響することです。
経済学における「外部」は、取引が行われる市場の外側という意味です。
例えば、工場などが、公害を自分のせいだと考えずに、無視してしまうことで、工場で悪臭が発生し、周辺住民が迷惑を被ることがあります。
このように、周りの人へ影響があることを「外部性」と言います。
市場活動の当事者じゃない人、つまり「外部の人」への影響があるという意味です。
外部性のうち、他の人に悪い景気を与える場合を「外部不経済」、よい影響を与える場合を「外部経済」と呼びます。
外部経済
外部経済とは、誰かがビジネスをすることで、周りに良い影響があることです。
例えば、りんご農家が隣に引っ越してきたら、養蜂場の人は嬉しいです。(りんごの花のおかげで、ハチミツが作りやすくなるからです)
これを外部経済といいます。
外部不経済
外部不経済とは、周りに悪い影響があることです。
例えば、工場などが、周りへの悪影響を考えずに、自分の利益だけを考えたら、公害がおきます。
これを外部不経済といいます。
外部不経済の代表例は、地球温暖化や、公害です。
地球温暖化
石油や石炭などの化石燃料を燃焼させると、二酸化炭素が大気中に放出されます。
しかし、二酸化炭素は地球から宇宙に熱が逃げていくのを妨げる悪影響を持っています。
化石燃料を使うのは、経済活動の結果です。
消費者がガソリンを買って自動車を運転しら電力会社が化石燃料を燃やして発電した電気を工場や家庭に販売するのは、普通の市場での取引です。
しかし、その結果排出される二酸化炭素が最終的には地球の気温上昇をもたらし、人類にとって大きな環境問題になっているのです。
公害
外部不経済のもう一つの例が公害です。
有害な廃棄物を適正に処理しようとすると、高いコストがかかります。
処理せずに工事外に捨ててしまえば、その企業にとっては、コストがゼロです。
自分の利益だけを考えれば、不法投棄の方が高い利潤を得られるのです。
しかし社会全体を見れば、有害物質が垂れ流されて、周囲住民の生命や健康に被害を及ぼうという大きな「不経済」が生じているのです。
外部性の対策
外部経済の内部化
外部経済の内部化とは、外部の人が背負ってる負担を、内部の人に背負ってもらうことです。
公害がおきると、工場のせいで、外部の人が環境コストを背負うことになります。
コストというのは、例えば、公害により健康を害した人は、病院にいく費用を払わなければいけないコストなどです。
公害が起きると、外部の人がコストを背負いますが、そのようなコストは内部の人が負担すべきです。
内部化するためには、どのような方法が考えられるでしょうか?
税金をかける
外部経済を内部化する方法として古くから主張されてきたのが、課税です。
問題を是正するために発生するコストを、課税という形で企業に負担してもらうのです。
これは、ピグー税と呼ばれます。
ピグー税
ピグー税とは、公害などの悪影響を是正するために、工場などに課す税のことです。
ピグー税は、外部不経済を生じさせている経済主体にたいして、不経済の分だけ課税をすることで、その効果を減殺しようとする税金です。
地球温暖化対策としてCO2の排出量に応じて環境税をかけるのです。
課税をしたら、化石燃料をたくさん使ってる商品ほど、値段が高くなります。
一方、再生可能エネルギーには、税が課されないので、相対的に安くなります。
それぞれの企業は、商品を安くしたいので、再生可能エネルギーを使いたくなります。
再生可能エネルギー技術の価値が高まります。
そしたら、研究にもっと資金をかけることが割に合うようになり、研究が進みます。
しかし、課税にもデメリットがあります。
課税の重さ度合いのバランスが難しいのです。
課税が、重すぎると化石燃料を使う産業の負担が大きくなりすぎてしまいます。
また、課税が小さすぎても、効果を発揮しません。
課税をするときは、外部不経済に関する正確な情報を得ることが大切です。
コースの定理
コースの定理とは、政府の介入がなくても、民間の交渉により外部不経済が解消される、というものです。
当事者の人同士は、自分の利益のためなら、「交渉をしたい」と考えるので、本人たちどうしで、その結果、市場の失敗は解決できるという考え方です。
まとめ
共有地の悲劇とは、それぞれの企業が自己利益だけを追求した時におこるトラブルのことです。