賃金が上がると失業者が増える
「賃金が上がると失業者が増える」という考え方があります。
まずは、この理屈について紹介します。
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企業は、労働者に賃金を与えています。
もし、ひとりひとりの賃金が安くていいなら、より多くの労働者に賃金を与えることができます。
一人分の取り分が少ないなら、多くの労働者が賃金をもらえるのです。
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一方で、ひとりの賃金を高くしてしまうと、その分、賃金をもらえない人が出てきます。
一人分の取り分が大きくなれば、全員には与えられないのです。
これが、古典派の考え方です。
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賃金をもらえない人のことを、失業者と言います。
これが、「賃金が上がると失業者が増える」という考え方の理屈です。
古典派では、失業者を減らすためには、仕事を分け合うべきだと考えられていました。
失業者がいるなら、その人を雇ってあげる代わりに、他の労働者の賃金を下げれば良いのです。
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失業者を減らすためには、労働者の実質賃金が下がることは「しょうがないこと」として受け取られていたのです。
実質賃金について
賃金について話し合うときは、私たちは名目の賃金ではなく、実質の賃金に注目する必要があります。
実質賃金とは、なんでしょうか?
実質賃金は、もらった賃金で、「どれくらい買い物できるのか」に注目している数字です。
例え話をするので、想像してみてください。
時給が100万円なのに、パンの値段も100万円になった世界があるとします。
これは、嬉しい状況ですか?
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これは、嬉しくない状況です。
お金が、たくさんあっても、パンの値段が高いなら、嬉しくないのです。
その理由は、実質的には、貧しいからです。
時給が100万円で、パンの値段も100万円の時、どれくらい買い物できるますか?
パン1個しか買えません。
物価が高いと、買い物できる量が減るのです。
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基本的には、賃金が高くなると嬉しいです。
お金はたくさんある方がいいのです。
その理由は、買い物がたくさんできるからです。
しかし、賃金が高くても、物価も高いなら、買い物をたくさんすることができないのです。
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以上が、実質賃金の説明です。
実質賃金の説明を、教科書の言葉で言い直すと、「実質賃金とは、もらった賃金から、物価の影響を差し引いた数字」です。
今の日本
日本では、2015年3月までの統計では、実質賃金は下がり続けています。
つまり、買い物できる量は減っているのです。
日本は、ずっと不況です。
この不況の原因は、マルクスに言わせるなら、「搾取しすぎ」です。
労働者の賃金を低くすると、不況になるのです。
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今の日本は、労働者の実質賃金が下がっており、非正規雇用が増えています。
非正規雇用の人は、正規雇用の半分程度の賃金で働いています。
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ピケティの意見
失業者を減らすために、賃金が下がることは、「しょうがないこと」なのでしょうか?
ピケティが注目したのは、労働分配率です。
労働分配率とは、会社で生み出した付加価値が、どれくらい労働者に分配されたかを示す数字です。
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企業は、お金を儲けた後、その一部を労働者の賃金にして、残りを経営者の取り分にしています。
そもそも、労働者の取り分が少なければ、労働者一人ひとりは、十分な賃金を得ることができません。
労働者の賃金が下がっている理由は、経営者の取り分が増えているからかもしれないのです。
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日本の労働分配率は、2年連続で下がっています。
会社が稼いだ金額のうち、経営者の取り分が増えているのです。
経営者がお金持ちになる方法
経営者が利潤を増やす方法の一つは、賃金を下げることです。
経営者は、儲けの中から、賃金を支払い、残りは経営者の取り分にしています。
つまり、もし労働者の賃金を減らせば、経営者の取り分が増えるのです。
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賃金が低くなることのデメリット
このように賃金を低くすることには、デメリットがあります。
それは、景気が悪くなることです。
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労働者の実質賃金が減ると、景気が悪くなります。
その理由は、実質賃金が下がると、買い物する人が減るからです。
賃金が低くなれば、人々は「節約しなければならない」という気持ちになります。
そして、お店のモノが売れなくなります。
お店のモノが売れないなら、お店はモノを作らなくなります。
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パンが売れないなら、パンを作りません。
こんな時期は、工場を大きくしようという気分にはなりません。
設備投資が起きないのです。
設備投資とは、オーブンを買ったり、工場を大きくしたりすることです。
景気が悪い時は、オーブンを買ったり、工場を大きくしたりしないのです。
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パンが売れる見込みがない時は、工場を大きくしないのです。
このような理由で、日本は長い間、不況の状況にあります。
量的金融緩和政策
こんな状況を打破するために、政府は量的金融緩和政策を行いました。
量的金融緩和政策とは、銀行からお店にお金を与えようとすることです。
お店は、お金が手に入ったら、そのお金を使って、工場を大きくするはずだからです。
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量的金融緩和政策で解決できない理由
しかし、日本の景気は良くなりませんでした。
なぜなのでしょうか?
では、先ほどのパン屋さんを見てみます。
パン屋さんが抱えている悩みは、パンが売れないということです
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パンが売れないから、パンを作らないのです。
ケインズは、「誰も買わないなら、作っても意味がない」と言いました。
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たとえ、お金をもらったとしても、パン屋さんは工場を大きくしません。
なぜなら、パンが売れないことがわかっているからです。
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設備投資をするメリットがないので、 量的金融緩和政策を行っても、設備投資が増えないのです。
パン屋さんたちは、お金がなくて、設備投資をしないのではありません。
パンをたくさん作っても、売れないので、生産を拡大しないのです。
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この結果、銀行にあるお金は、使われません。
お金は、銀行から出て行かないのです。
銀行に積み上がるだけです。
これを、「ブタ積み」と呼ぶそうです。
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政府は、量的金融緩和政策を行いました。
そのおかげで、お店や企業は、銀行からお金を手に入れやすくなりました。
しかし、お店や企業は、お金を借りませんでした。
その理由は、設備投資をする予定がないからです、
しかも、お店や企業には、使わずにとっておいてるお金がたくさんあります。
企業が使わずに持っているお金のことを、内部留保と呼びます。
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日本の企業の内部留保は、国家予算の3倍を超えるほどあります。
つまり、たくさんあるということです。
日本の企業は、お金を持っているのに、使わないのです。
労働者の立場から考えると「お金があるなら、賃金を高くしてほしい」と感じます。
しかし、今の日本の企業は「お金はあるけど、設備投資はしないし、実質賃金を下げる」ということをしているのです。
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不況の悪化
今の日本は、実質賃金が下がっています。
そのため、お金を節約する人が増えています。
それでは、なぜ人々は、節約をするのでしょうか?
ケインズは、その理由は、「不安になると貯金するからだ」と考えました。
ケインズがここで注目したのが、「貨幣愛」です。
景気が悪くなる理由は、人には貨幣愛があるからです。
将来は不確実です。
明日がどうなるかは、誰にも分かりません。
特に、不況の時は、人々の不安は大きくなります。
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不安になると、人は貯金をするのです。
しかし、貯金をする人が増えると、ますます景気が悪くなります。
これを、過少消費説と言います。
過少消費説
過少消費説とは、「お客さんが買い物をしないから、景気が悪くなる」という考え方です。
労働者の賃金が低くなると、労働者は、貯金をするようになります。
つまり、買い物をする人が減るのです。
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買い物をする人が減ると、景気が悪くなります。
その理由は、Aさんが貯金をすると、その分、Bさんのお店が儲からなくなるからです。
もし、Aさんが貯金をしていなければ、Bさんのお店で、Aさんは、パンを買っていたかもしれません。
しかし、Aさんが買い物をしなかったせいで、Bさんのお店では、パンが売れなかったのです。
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賃金を高くするべきだ
ピケティは、日本の景気が悪い理由は、賃金が低いからだと考えました。
そのため、景気を良くするためには、賃金を高くすることが大切であると考えました。
パン屋さんは、パンが売れなくて困っています。
一方で、お客さんたちは、お金がないということで悩んでいます。
パンを買いたくてもお金がないから買えないのです。
そのため、解決策としては、パンを買うための十分な賃金を労働者に与えればいいのです。
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賃金をもっと高くして、貧しい人々にお金を行き渡らせることで、買い物をする人を増やすことができます。
買い物をする人が増えれば、パンが売れるようになります。
そうすれば、パン屋さんはもっとパンを作るようになります。
工場を大きくするかもしれません。
つまり、設備投資が増えます。
こうして、景気を良くすることができるのです。