教育バウチャーとは
「教育バウチャー」という言葉を最初に言ったのは、フリードマンです。
バウチャーとは「お金の代わりになる紙」のことです。
クーポンと呼ばれることもあります。
バウチャーは、税金で集めたお金で用意します。
そして、それを子どもに配ります。
バウチャーをもらった子どもは、学校を選びます。
子どもは、選んだ学校にバウチャーを渡します。
学校は、子どもからバウチャーを受け取ります。
バウチャーは、政府に持っていけば、お金と交換してもらえます。
学校は集まったバウチャーの数に応じて、政府からお金を受け取ります。
教育バウチャーは、お金の代わりとして使われます。
教育バウチャーとは、教育を目的にしたものにしか使えないお金です。
バウチャーが必要な理由
なぜ、バウチャーが必要なのでしょうか?
それは、バウチャーがない社会では、子どもは、自分の家の近くの学校に行かないといけないからです。
なぜ、子どもは家の近くの学校に行かないといけないのでしょうか?
それは、その街の人から税金を集めているからです。
Aという町に住んでる人は、Aの町に税金を払っています。
そのため、Aの町の学校に行かないといけないのです。
もし、Bの町の学校に行きたければ、Bの町に引っ越す必要があります。
なぜなら、Aの町に住みながら、Bの町の学校に行ってしまうと、Aの町に税金を払いながら、Bの町の学校に通うかたちになってしまうからです。
しかし、バウチャー制度があれば、Aの町に住みながら、Bの町の学校に行くこともできます。
教育バウチャーのメリット
教育バウチャーのメリットは、子どもが学校を選べるようになることです。
フリードマンは「学校選択の自由」を大事にしました。
町によってお金持ちが多い町と、そうでない町があるかもしれません。
貧しい町では、人々があまりたくさんの税金を納めることができません。
貧しい町の学校は、資金が少ないので、教育のレベルが低いかもしれません。
貧しい家庭に、優秀な子どもが生まれても、教育レベルの高い学校に行かせるには、引っ越すしかありません。
そのため、教育バウチャー制度によって、学校を選択する自由を用意するべきなのです。
親が喜ぶ教育をしてる学校には、たくさんのバウチャーが集まります。
先生の給料を増やして、優秀な先生を集められるようになります。
また、先生どうしでの競争が生まれるので、教育レベルは向上するはずです。
「競争があれば、質が上がる」というのがフリードマンの意見です。
アメリカの公立学校の教育は非効率で質が低い、とフリードマンは言います。
そして「教育の質を高めるには、市場メカニズムを導入すべきだ」と提案したのです。
市場メカニズムとは、競争に勝った人がいい思いをするシステムのことです。
競争に勝ちたいと思う人が増えれば、先生たちは、もっと楽しい授業にするために努力をします。
生徒が自由に学校を選択できるようになれば、先生は選ばれるために頑張るのです。
教育バウチャーのデメリット
市場メカニズムとは、強い組織が生き残り、弱い組織が消えていくシステムのことです。
生徒から人気の学校が生き残り、生徒に人気のない学校が消えてくれれば、みんなが喜ぶはずです。
お金がある学校は、質が良くなり、さらに生徒に人気になって、もっとお金が集まります。
一方で、お金がない学校は、質が悪くなり、さらに人気が落ちて、お金が集まらなくなります。
こうすると「もう努力しても追いつけない」という気持ちになってしまう先生もいるかもしれません。
アメリカの一部の地域では、バウチャーのシステムがあります。
バウチャーのシステムを体験したアメリカ人の知り合いは「バウチャーシステムが嫌いだ」といっていました。
なぜなら、学校は、お金がなくなっても、簡単に潰れないからです。
学校は貧乏なまま、生徒を集めて、ぎりぎりで運営することになります。
いい学校に入れれば嬉しいですが、定員の関係で、人気のない学校に行かざるを得ない子どももいます。
お金がある学校と、お金がない学校がハッキリ分かれるようになると、どの学校に入るかで、人生が大きく変わってしまうのです。
人気のない学校は、生徒が減るたびに、資金が減って苦しくなります。
バウチャーシステムは、学校格差を拡大させる仕組みなのです。