流動性の罠とは「もう金融政策は役に立たない」となってしまう状態のことです。
なぜそんなことになるのか、見ていきます。
通常の金融政策
景気が悪い時は、金融政策を行います。
金融政策をすると、景気を良くすることができます。
金融政策とは、例えば、銀行の金利を下げることです。
通常であれば、金利を下げると景気が良くなります。
その理由は、金利が低い時にお金を借りた方がトクだからです。
銀行の金利が下がると、お金を借りる人が増えます。
銀行の金利を下げるということは、銀行からお金を安く借りられるということです。
銀行からお金を借りるのは、会社の上の人たちです。
銀行からお金を借りて、工場を大きくしたり、ロボットを買ったりします。
そうすれば、よりたくさんの商品をつくれるようになります。
銀行からお金を借りて、工場を大きくすれば、今までよりも儲けやすくなるのです。
たくさん儲けることができれば、銀行にお金を返した後も、儲け続けることができます。
このように銀行からお金を借りて、工場を大きくしたりすることを「設備投資」と言います。
設備投資が増えると景気が良くなります。
その理由は、工場を大きくする時に、建物を建てる建築会社が儲かるからです。
また、ロボットを買えば、ロボットを作った人が儲かります。
設備投資が増えれば、たくさんの人が儲かって、景気が良くなります。
このように金利を下げることで、景気の回復を目指すことを「金融政策」と言います。
景気を良くする方法
景気を良くする方法は、銀行の金利を下げることです。
金利が下がると、会社の上の人たちは「銀行からお金を借りてでも、新しい設備投資をしよう」という気持ちになります。
設備投資が増えれば景気が良くなります。
だから、景気が悪い時には銀行の金利を下げればいいのです。
流動性の罠
しかし、金利を下げたのに、景気が良くならないことがあります。
これをケインズは「流動性の罠」と呼んでいます。
設備投資が増えない理由は、みんな未来が不安だからです。
今の日本のように「ずっと景気が悪い状態」が続いていると、みんな未来が不安になってきます。
みんなが節約をしているので、お客さんが少なくなります。
そもそもお客さんが少ないのであれば、商品をたくさん作っても売れません。
それなら「工場を大きくする必要はない」と考える会社が増えます。
どんなに金利が下がっても、みんなは銀行からお金を借りようとはしなくなります。
設備投資という挑戦をするのが怖いのです。
基本的には「金利を下げれば、景気が良くなる」と考えられています。
しかし、金利を下げているのに、景気が良くならない時があります。
これを「流動性の罠」と呼びます。
金利を下げ続けて、ゼロまで行ってしまうと、それ以上、景気は良くならないのです。
ケインズの意見
流動性の罠について話したのはケインズです。
ケインズは「流動性の罠の時は、金融政策が役に立たなくなってしまう」と考えました。
そのため「景気が悪いときは、金融政策だけじゃなくて、それ以外のこともやろう」と提案しています。
そのため「失業者を減らす方法である財政政策も必要である」と主張しています。