一般的にいうと、貧富の差を是正するには、政府の介入を増やすことが大切です。
しかし、政府の介入に反対する人は、すごく多いです。
『絶望を希望に変える経済学』を書いたアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロは、この問題を解決するためには、「政府を批判しすぎない方がいい」と考えました。
この考え方について詳しく見ていきます。
貧富の差を是正する方法
一般的には、貧富の差を是正するためには、政府が介入することが大切です。
政府の介入とは、具体的にいうと、お金持ちから税金を集めて、貧しい人のために使うということです。
政府の介入のためには、増税が必要なのです。
しかし、増税することを嫌う国民は、多いです。
増税を嫌う人が多い理由
多くの人が増税を嫌う理由は、政府が上手くお金を扱えるのか分からないからです。
貧富の差を是正「するかどうか」の話ではなくて、「できるかどうか」の話になってしまうのです。
そして、多くの国民が、貧富の差を解決しなくていいと考える理由は、貧富の差を解決することが「できない」と考えているからです。
アビジット・V・バナジーとエステル・デュフロによると、アメリカ人の30%は、政府は貧富の差を是正することはできないと考えているそうです。
政府に対する不信感は、ほんとうに救済を必要とする人々を助ける上で最大の障壁となりそうです。
どうして、このような状況になってしまったのでしょうか?
政府を批判しすぎた
どうして国民は、政府を信頼できなくなってしまったのでしょうか?
その理由は、「経済学者が何かにつけて政府を批判したからだ」と、アビジット・V・バナジーとエステル・デュフロは考えました。
多くの経済学者は、「政府の努力は必ず失敗する」と決めてかかっており、必要な政府介入まで、「不要だ」と主張してきたのです。
本当に政府は信用できない?
近年では、「政府なんて信用できない」と主張することが流行しています。
しかし、本当に、政府の人は、お金に汚いのでしょうか?
本当に、政府の人は、国民から集めたお金で、のうのうと暮らしているのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
政府の人は、国民のお金でのうのうと暮らしているわけではありません。
しかし、汚職を撲滅することが難しいのも事実です。
例えば、汚職に対する罰金を考えてみます。
有害物質を垂れ流した企業は、汚染の証拠を消してもらうためなら、政府の人に、多少のお金を払うかも知れません。
こうした構造になっている以上、腐敗の撲滅は、簡単ではないのです。
むしろ、腐敗を撲滅しようとする方が、お金がかかるかもしれません。
政府を信頼できなくなるデメリット
とはいえ、政府を信頼できなくなることには、デメリットがあります。
まず、政府を信頼できなくなると、人々は、政府の介入に、猛反対するようになってしまいます。
明らかに政府の介入が必要な時ですら、政府の介入に反対するようになってしまうのです。
それに、政府で働こうと志す人が減ってしまうかもしれません。
政府がうまく機能するためには、優秀な人が政府で働くことが大切です。
しかし、政府の評判が悪くなると、優秀な若者が政治家になりたがらなくなります。
政府に優秀な人材が集まらなければ、政府はますます非効率になってしまうのです。
さらに、「政府はお金に汚い」と言い続けると、そのうち、政府が本当に悪さしてる時に、気付けなくなってしまうようになります。
政治家が恥ずべき汚職をしたとしても、「またか」とスルーするようになってしまいます。
人々は、政府に何も期待しなくなり、注意を払うことすらしなくなってしまったら、政府の人は、もっとお金に汚くなってしまうかもしれません。
これが一番の問題なのです。