フィリップス曲線についての、ケインズとフリードマンの考え方の違いについて解説します。
ケインズは、フィリップス曲線を信じていましたが、フリードマンは、信じていませんでした。
フリードマンは、インフレになっても、貨幣錯覚がなくなれば、再び失業率が増えると考えました。
どういうことか、見ていきます。
フィリップス曲線とは
フィリップス曲線とは、下記の2つを表したグラフです。
・物価が上がるほど、失業率が下がる
・物価が下がるほど、失業率が上がる
では、なぜ、失業率が下がると、物価が上がるのでしょうか?
「失業率が下がる」とは、「働いて給料をもらう人が増える」ということです。
少ない商品をたくさんのお客さんが奪い合うと、商品は高くても売れるようになります。
買い物をしたい人が増えると、「高くてもいいから買いたい」という人が現れるので、商品の値段が高くなるのです。
一方で、物価が下がると、失業率が上がります。
「物価が下がる」とは、「安くしないと売れない」ということです。
お客さんが少ない時は、安くしないとお客さんに選んでもらえません。
お店は、お客さんに選んでもらうために、商品を安くするのです。
ケインズの考え
失業率と物価上昇率を同時に低く抑えることは、難しいです。
そのため、ケインズは、失業者を助けることを優先しました。
そして、インフレになるのは、しょうがないと考えました。
ケインズは、世の中のお金が増えたら、失業者が減ると考えました。
フリードマンの考え
一方で、フリードマンは、世の中のお金が増えても、インフレになるだけだと考えました。
もし、政府がケインズに従って財政政策を行えば、物価は上昇します。
ここまでは、ケインズとフリードマンは、同じ考えです。
しかし、フリードマンは、時間が経てば、再び失業者は、自然失業率の水準に戻ると考えました。
自然失業率
フリードマンは、長期的に見れば、失業率は、ある水準で安定すると考え、これを自然失業率としました。
フリードマンは、失業率は、すでに自然失業率であると考えています。
もし、国の中に失業者がいるのなら、彼らは、働きたくないのです。
フリードマンは、働きたい人は、みんな働いているはずだと考えています。
ケインズ批判
フリードマンは、ケインズ政策を批判しました。
なぜなら、ケインズは、失業率を無理やり減らそうとしてるからです。
しかし、働きたくない人が一定数いるので、失業率は結局、自然失業率の水準になると、フリードマンは考えます。
その結果、失業率は以前と変わらないのに、物価だけ上昇してしまうことになります。
自然失業率より低くしようとして、財政政策を行うと、インフレ率だけが上がり、経済は不安定になるというわけです。
貨幣錯覚
次に、貨幣錯覚についてみていきます。
貨幣錯覚とは、人が実質値ではなく名目値に基いて物事を判断してしまうことです。
給料も増えて、物価も上がってると、実質的には、給料は増えていません。
「お金を持ってるから買い物したい!」と感じるのは、あくまでも、一時的な錯覚であると、フリードマンは考えます。
なぜなら、買い物をしたい人が増えると、物価が上がるので、買い物をしたい人は、減るからです。
モノがどんどん売れるという状態は、長く続かないのです。
だから「ケーキをたくさん作ろう」とは、なりません。
「貨幣錯覚」が解消されると生産者が生産を増やすことはないため、投資も増えません。
そのため、失業率も改善さません。
フリードマンは、インフレしていても、貨幣錯覚がなくなれば、再び失業率が増えると考えました。
買い物したい人が減ってしまうと、景気は良くなりません。
そのため、世の中のお金を増やしても、意味ないのです。
スタグフレーション
なぜ、フリードマンは、フィリップス曲線を信じないのでしょうか?
それは、スタグフレーションという、フィリップス曲線では説明がつかないことが起きたからです。
スタグフレーションとは、商品の値段が高いのに、失業率も上がることです
スタグフレーションの時は、賃金が上がらないにもかかわらず、物価が上昇するのです。
これは、国民にとって、厳しい状況です。
フリードマンは、スタグフレーションを経験したことで、フィリップス曲線を信じなくなりました。
まとめ
フィリップス曲線では、2つのことが表されています。
・インフレになると、失業者は減る
・失業者が増えると、インフレは改善する
ケインズは、失業者を減らそうとしたのに対し、フリードマンは、インフレになりたくないと主張しました。