世界の貧富の格差は、悪化しているといわれています。
しかし、ピケティは、貧富の格差を是正する方法が二つあると考えました。
それぞれ見ていきます。
貧富の格差
ピケティは『21世紀の資本』で、世界の貧富の格差が今後も広がっていくと主張しました。
これから、お金持ちがもっとお金持ちになり、貧しい人がもっと貧しくなっていくのです。
ピケティの予想では、2030年ごろのアメリカでは、トップ10%が国民所得の60%を稼ぎ、最も貧しい50%はわずか15%しか受け取ることができなくなります。
このように、大きな格差が生まれてる理由は2つです。
「超世襲社会」と「超能力主義社会」です。
①超世襲社会
「超世襲社会」とは、親からたくさんのお金をもらう中で、格差が広がっていく社会です。
②超能力主義社会
「超能力主義社会」は、たまたま運が良かったスーパー経営者が、おかしいくらいお金を稼ぐ社会のことです。
歴史を見てみると、アメリカでは、1920年代に所得格差が急速に拡大しています。
所得階層トップ10%が国民所得の50%以上を受け取るようになっていたのです。
一方で、所得格差が最も小さくなったのは、1950年〜1980年です。
大恐慌と第二次世界大戦、その後の課税制度によって、アメリカの所得格差も縮小しました。
1980年以降、アメリカの格差は、再び開いていきました。
教育
一つ目は教育です。
まず、教育の機会に格差があると、貧富の格差につながります。
その理由は、教育を受けると、高い技術力を身につけるからです。
企業は、高い技術力を身につけた労働者を雇いたいです。
そのため、高い賃金をはらうことで、高い技術力を身につけた労働者に企業で働いてもらうようにするのです。
そのため、高い教育を受けた人は、高い賃金をもらえます。
一方で、教育をあまり受けていない人は、技術があまりありません。
つまり、誰にでもできる仕事しかできません。
誰にでもできる仕事をやりたい人は、世の中にたくさんいます。
企業としては、「誰にでもできる仕事は、できるだけ安く働いてくれる人にやらせたい」と考えています。
こうして教育を受けた人と、あまり受けてない人の間には、賃金の格差が生まれます。
高い技術を身につけた人は、高い賃金をもらえますが、あまり技術がない人は、安い賃金しかもらえません。
高い技術を身につけるためには、教育が必要です。
そのため、貧富の格差を減らすためには、質の高い教育の機会を全ての子どもに与えることが必要なのです。
最低賃金
2つ目は、最低賃金です。
企業は、最低賃金より低い賃金で労働者を雇ってはいけません。
安く雇いたくても、最低賃金だけは払う必要があるのです。
つまり、最低賃金を高くすれば、教育を受けていない労働者の賃金が高くなります。
そのため、貧富の格差が是正されるのです。
実際に、フランスでは、最低賃金が高くなったタイミングで、賃金の格差が小さくなりました。
教育を普及させたり、最低賃金を上昇させたりすることで、格差は是正できるのです。
しかし、教育を普及させたり、最低賃金を上昇させるためには、税金を集める必要があります。
そのために、ピケティは、グローバルな累進課税を提案しました。
グローバルな累進課税
お金持ちの人は、自分だけトクするために、自分のお金を海外のタックス・ヘイブンなどに移動させます。
タックス・ヘイブンとは、税が低い国のことです。
お金持ちの人の立場から考えると、税が高い国にお金を置いておくより、税が低い国に移動させた方がおトクです。
これを、「租税回避」と言います。
お金持ちの人は、税金を納めないようにするために、お金をタックス・ヘイブンに移動させるのです。
租税回避は、お金持ちの人は嬉しいですが、世界の貧富の格差を大きくします。
このようにして「税金を納めない努力」をする人が多いです。
世界トップレベルのお金持ちから、税金を集めるのは、難しいのです。
そこで、ピケティが提案したのは、グローバルな累進課税です。
そのためには、世界が協力する必要があります。
現実では、お金持ちは、銀行にお金を預けることでもらえる金利で稼いでいます。
遊んで暮らせるのです。
遊んで暮らせるという問題は、多くの文明で問題を引き起こしました。
キリスト教やイスラム教の国では、金利を禁止してる地域もあります。
また、マルクスの社会主義が人気になった時代は、私的所有権そのものをなくそうとしました。
資本課税は、それに比べると、ずっと控えめなルールです。
働いた努力が自分のものになるし、その一部を税金として納めてほしいだけなのです。
ピケティは、所有権を尊重しています。
個人の権利を守ることであって、お金持ちの人から幸せを奪おうとまではしてないのです。