新自由主義者たちは、インフレの解決策として、インフレターゲットを提案しました。
しかし、フリードマンは、これに、賛成も反対もしました。
どのように考えていたのか、見ていきます。
なぜインフレターゲット?
まず、「なぜインフレターゲットが必要なのか」についてです。
インフレターゲットが必要な理由は、急激なインフレを抑えるためです。
インフレとは、「インフレーション」の略で、お店の商品の価格がどんどん高くなってしまうことを指します。
特に、1970年代は、アメリカやイギリスなど、多くの国でインフレが起きました。
日本でも、トイレットペーパーの価格がものすごく高くなりました。
モノの価格が高くなると、お店で買えるモノの量が減ります。
モノの値段が高くなってしまうと、今までより買えるモノの量が減るのです。
ずっとインフレが続くということは「今後、買い物できる量が減る」ということです。
「買い物できるモノの量が減る」ことを「購買力が下がる」と言います。
インフレになると、購買力が下がるのです。
こんな時は、人々はこう考えます。
「貧しいのは、賃金が安いからだ」
すると、労働者は前もって、会社の人に、「賃金を高くして」と要求します。
労働者は、労働組合を作って、「賃金を上げて」と企業の経営者たちに向かって主張するようになる、とフリードマンは考えました。
すると、企業は、賃金を高くします。
賃金が高くなれば、労働者は助かります。
しかし、その代わり、従業員のうちの誰かをクビにします。
賃金が高くなると、企業は賃金を払いきれなくなるので、一部の労働者をクビにしてしまうのです。
すると、失業者が増えます。
つまり、賃金を高くすると、失業率が上昇するのです。
労働者の賃金が上昇すると、みんながお金持ちになります。
また、賃金が高くなれば、人々は商品の価格が高くても、買い物できるようになります。
みんながお金を持つと、お店の商品は高くても売れるようになります。
そのため、お店の商品がさらに値上がりしたのです。
モノが高くても、売れるので、お店のモノの値段が高くなります。
しかし、このように、モノの値段が高くなれば、人々は、「賃金をもっと高くしてほしい」と望むようになります。
そのため、労働組合は、再び「賃金を高くするように」要求しました。
そして、賃金も高くなりました。
そのように、賃金が高くなり、物価も高くなるというスパイラルが始まってしまうのです。
インフレの原因
インフレは、問題です。
インフレが起きた時、国の偉い人たちは、こう考えます。
「インフレの原因は、お金の量が多いからだ」
どうして、お金の量が増えると、インフレになるのでしょうか。
それは、お客さんがお金を持っている時、商品の価格が、高くなるからです。
お客さんが、お店の商品を買わなければ、お店は、商品を値下げします。
お店の商品が売れ残れば、値下げをして、売り尽そうとするのです。
しかし、お客さんが、お店の商品を良く買っている時は、値上げをします。
より高くても買ってくれそうなら、高く売るのです。
お客さんがお金を持っている時は、商品の価格が高くなると言うことです。
お金をたくさん刷ると、世の中に出回るお金の量が増えます。
つまり、人々が、みんなお金を持っている状態になります。
そんな時、お店の商品の価格は、高くても売れるようになります。
だから、世の中のお金の量が多いと、インフレになるのです。
インフレの解決策
このようなインフレを解決するには、どうすればいいでしょうか?
自由主義の人からオススメされているのは、インフレターゲットです。
インフレターゲットとは、中央銀行が世の中のお金の量を減らすことで、インフレを落ち着かせようというものです。
世の中のお金の量が減れば、インフレを止めることができるのです。
中央銀行がどのように、世の中のお金の量を減らすのかについて説明します。
中央銀行は、インフレを抑えるために、金利を高くします。
これを、「金融引き締め」といいます。
金利が高くなると、企業は銀行からお金を借りづらくなります。
お金が手に入りづらくなるのです。
こうして、世の中のお金が少なくなります。
すると、人々はお金を使わなくなります。
お金を用意できなくなると、給料の支払いに必要なお金も用意できなくなり、賃金を高くすることもできなくなります。
こうして、労働者の賃金は上がらなくなり、不況になります。
つまり、国民みんなが貧しい状況が続くようになります。
インフレターゲットは、は不況という痛みを伴う政策なのです。
フリードマンの主張
フリードマンは、この考え方に、賛成もしてますが反対もしています。
フリードマンは、インフレは良くないと考えています。
また、中央銀行が金利を上げることで、インフレが収まることにも同意しています。
しかし、インフレターゲットに反対もしています。
その理由は、「中央銀行には、物価を上手にコントロールする能力がない」と考えているからです。
インフレターゲットとは、「物価を安定させる役割を中央銀行に任せる」と法律に定めることです。
世の中のお金が増えるのも、減るのも、中央銀行の気分次第です。
「気分次第」のことを、経済学では「裁量に任せる」と言います。
フリードマンは、「中央銀行の裁量に任せるのは危険だ」と考えました。
なぜなら、中央銀行にお任せをしたとして、中央銀行のトップの人たちが、上手くやってくれるとは限らないからです。
フリードマンは、中央銀行が、必要以上にチカラを持ってしまうことを恐れています。
そこで、フリードマンが主張したのは、K%ルールです
これは、中央銀行が毎年あらかじめきめた割合(K%)だけ、お金の量を増やしていくというものです。
K%と固定すれば、中央銀行の裁量に振り回されれこともなくなると、フリードマンは考えました。