経済学は「人は利己的である」ということを前提にして社会の仕組み考える学問です。
私たちは、お金の話になると、自分の幸せを優先してしまうことがあります。
でも、それでいいと、アダムスミスは言います。
なぜ、そのように考えたのか、見ていきます。
アダムスミス
「人は利己的である」と最初に言い出したのは、経済学の父と呼ばれているアダムスミスです。
アダムスミスは『国富論』という本を書きました。
そこでは「人は利己的だけど、それでも経済は上手く回る」ということを書いています。
分業
世の中には、いろんな職業があります。
ケーキ屋さん、魚屋さん、車屋さん、肉屋さん…
ケーキ屋さんは、朝から晩まで、ずっとケーキを作っています。
そして、稼いだお金で、いろんなものを買って生活しています。
買うということは「お金と交換する」ということです。
私たちは、毎日のように「交換」をして生活しています。
なぜなら、自分一人だけのチカラだけで、魚を取ったり、肉を捌いたり、車を作ったり、ということはできないからです。
私たちは「分業」をしています。
分業してる社会なので、私たちは、孤独に生きることはできません。
自分の欲しい物を、すべて自力で用意するのは、不可能なのです。
私たちは、生活をするために、自分が作った商品を他の商品と交換しなければいけません。
アダムスミスは「すべての人間は生まれながらにして取引し交換しようとする傾向を持っている」と考えています。
交換をする時に「利己心」が大切です。
利己心が必要な理由
人は、交換をしながら生きています。
交換は、たいていの場合は、スムーズに行われます。
その理由は、利己心があるからです。
お互いが「相手は利己心で行動してるだろう」と考えてる時は、交換は上手くいきます。
「人はそれぞれ自分を幸せにするために行動するだろう」という前提があるからこそ交換 は上手くいくのです。
買い物をする時に、もしお互いが親切心で行動するようになると、そのやり取りは上手くいかなくなると、アダムスミスは考えています。
自分が何が欲しいかをちゃんと言い合うことで、お互いが満足するような交換ができるのです。
利己心は周りの人を喜ばせる
利己心は、悪いことだと思われがちです。
しかし、中には利己的に生きることで、いつの間にか、周りの人を喜ばせてしまう時もあるかもしれません。
例えば、ケーキ屋さんが、たくさんのケーキを作る理由は、その人がお金を稼ぎたいからです。
お金を稼ぎたいと言う利己的な考え方を持っていないと、その人はそもそもケーキをどんどん作るということはしなくなります。
ケーキ屋さんが「お金を稼ぎたい」という利己心を持っているから、たくさん働きます。
ケーキ屋さんが、働いてくれるから、お客さんはケーキを買うことができます。
利己心があるから、結果的にお客さんがケーキが食べれて幸せになるのです。
しかし、アダムスミスが使う「利己心」という言葉には、注意点があると思います。
彼が言う「利己心」というのは、交換をスムーズに行うための言葉です。
「他人を不幸にして良い」という文脈ではないというのが、注意点です。
利己的な人は努力する
利己的な人は努力をします。
お金持ちになるために節約したり、お金を稼ぐために、勉強したり、がんばって働いたりします。
また、健康でいるために、自分の身体に気を遣ったり、社会的地位を上げるために、「よい生き方をしよう」と努力します。
それが、結果的に、周りの人にいい影響を与えることが多いです。
人は共感できる
アダムスミスは、人には共感のチカラがあると考えました。
例えば、他人が幸せなら、自分も嬉しいです。
他人が痛がっていたら、まるで自分が痛いみたいに辛く感じてしまいます。
人は自分の周りの人がうまくいってほしいと願っているから、他人に共感します。
共感とは「他人の感情を自分の心の中に写し取り、同じ感情を引き起こそうとする心の働き」のことです。
アダムス・スミスが書いた本によれば、人が道徳的な生き方ができるのは、他人に感情移入できるからです。
人はよく利己的になりますが、それと同時に周りの人の幸せを願っています。
そのため、国民どうしのやり取りを放っておいても、上手くやっていけます。
だから、政府がわざわざ指図をしなくても良いということをアダムスミスは主張しました。
アダム・スミスは、人は利己的だと認めました。
しかし、それと同時に、人には他人に共感するチカラがあると考えました。
自分を道徳的に抑え込むこともできるから、利己的でもコミュニケーションが上手くいくのです。
共感のチカラを育てる方法
アダムスミスは、国民の共感のチカラを育てるべきだと考えました。
共感のチカラを育てる方法は、教育です。
そのため、まずは学校を整備するべきだと主張しました。
当時のイギリスは、お金持ちの子どもだけが教育を受けることができました。
しかし、教育が受けられずに、貧しくなった人は、精神が鈍化していき、共感のチカラが衰えてしまいます。
そのため、貧しい日雇い労働者の子供たちにも最低限、読み書き算数は教えるべきだとアダムスミスは主張しました。