逆選択
逆選択とは、情報量や利益の差によって、あたかも本来とは逆の選択をしているかのようになってしまう現象です
例えば、お得な方を選んだつもりが、損な方を選んでしまっているという状況の時に使います
逆選択の例1
逆選択の例です
中古車の販売について見ていきます
「どれがいい車なのか分からない」ということは、「買い手に与えられている情報が不十分である」ということです
逆選択とは、情報が不十分である事によって、劣っている方が選ばれ、悪質なものがはびこってしまうことを言います
上記の例だと、市場では欠陥車だけが選ばれて、優良車が売れないという問題が起きています
人々は良いものを選ぼうとしているのに、結果的には逆のことが起きてしまったのです
情報の非対称性
情報の非対称性とは、取引をしている人たちのうち、情報を多く持ってる人と、あまり持ってない人がいる状況のことです
情報の非対称性は、情報を知っている人が得をする状況です
上記の例でも、中古車が売買される前に、売り手と買い手の間で、中古車の質に関する情報の非対称性が存在していました
「情報の非対称性」があることで、いい中古車が買えなくなってしまったのです
レモンの原理
レモンの原理とは、売り手・買い手の情報格差が原因で、質の悪い商品しか市場に出回らなくなるという理論です
例えば、中古車市場で、欠陥車と優良車が混在していると、買い手は、欠陥車に相当する金額しか払わなくなります
そのため、市場から優良車が逃げてしまうのです
レモン市場
レモン市場は、粗悪品が横行しやすい市場のことを言います
レモン市場で、粗悪品が横行しやすい理由は、以下の通りです
情報の非対称性が大きい市場では、消費者は、いい商品と粗悪品を見分けられないため、市場はレモンだらけになってしまうのです
ピーチ市場
ピーチ市場とは、情報の非対称性が少ない市場です
桃は、少し古くなると、表面が黒ずむので、質の高いものを見分けやすいです
ピーチ市場では、商品の良し悪しが消費者にもすぐに分かってしまうので、粗悪品はなくなります
また、良いものは良いとアピールしやすく、消費者も粗悪品を買わされるリスクが少ないので、レモン市場のように価格が下落していくこともありません
逆選択の例2
さて、別の逆選択の例も見てていきます
健康保険のケースです
しかし、不健康な人ばかりが保険に加入すると
病気がちの人ほど、保険に入りたがります
しかし、病気がちの人ばかりが保険に入ると、保険料を上げないと、会社が潰れてしまいます
このようにして、保険料がどんどん高くなるという連鎖が生まれてしまうのです
一人ひとりは自分の健康状態をよく知っていても、保険会社はお客さんの健康状態を知りません
ここに情報の非対称性があります
その結果、不健康な人ばかりが加入して、医療保険といったサービスが成立しにくくなってしまうのです
モラルハザード
モラルハザードとは、経済学的には、「見えないところで注意を怠る」という意味です
例えば、健康保険の例でいうと、保険に加入しているという安心感から注意を怠り、病気になる確率が高くなることがあります
これをモラルハザードといいます
安心感や油断が生まれることで、保険加入をしていない人よりも、健康を害するようなことをすることが増えるそうです
モラルハザードの例
保険に入っていない場合、事故や病気など万が一のことがあった場合は、かなりの額のお金を自分で用意しなくてはなりません
しかし、保険に加入していれば、事故や病気をしたときもお金の面では、そこまで心配がなくなります
そうなると、「健康体を維持しよう」という気持ちが薄くなってしまうのです
ここに、情報の非対称性があります
お客さんは、自分が健康を害することをしていることを、知っていますが
保険会社の人は、それを知りません
情報の非対称性があると、モラルハザードが引き起こされます
モラルハザードがおきる原因
モラルハザードが生まれるのは、情報の非対称性があるからです
保険の例でいえば、保険会社がお客さんの行動をずっと監視することはできません
そのため、お客さんが、健康に気を遣っているのか、気を遣っていないのかは、見分けることができないのです
モラルハザードを防ぐ方法
モラルハザードを防止するための策もあります
例えば、保険の利用回数によって、保険料が変わるようにすることです
この制度があれば、お客さんは自分の保険料を下げるために、健康に注意するはずです
シグナリング
シグナリングとは、非対称性をなくそうとする行為です
情報を持っている側が持っていない側に、積極的に情報を発信することで、レモンとピーチを見分けやすくする行動です
例えば、「2年間は無料で修理します」と言えるのは、優良車を売ってる人だけです
欠陥車を販売している人は、その車が壊れやすいことを知っているため「無料で修理します」なんて言えません
このように、シグナルを送れば、お客さんはピーチを見つけやすくなります
スクリーニング
スクリーニングとは、「審査」「選考」「ふるい分け」という意味です
例えば、就職活動で、面接に来た学生がいたとします
学生が面接官に自分の学歴などを伝えることを、シグナリングといいます
逆に、面接官が学生を見極める事を、スクリーニングといいます
就職活動では、企業が良い学生を見分けなければならないですが、労働市場には情報の非対称性があります
学生は自分のことをよく知っていますが、採用する企業の側は、学生の技能、能力について、充分な情報を持っていません
このとき、学歴や資格などが、シグナリングになるのです