リカードとは「自由貿易をするべきだ」と考えた人です。
自由貿易を主張した人の中で有名なのは、アダムスミスです。
リカードは、アダムスミスの意見に賛成しています。
まずは、アダムスミスの意見を見ていきます。
アダムスミスの分業論
分業して交換するべき
アダムスミスは「分業をして交換すると効率が良い」と言いました。
例えば、昔の日本では、1人が外で働いて、もう1人が家で働くというように役割分担をしていました。
「お金を稼ぐ人」と「家事をする人」を役割分担していたのです。
役割分担のことを「分業」といいます。
上記の例では、稼いできたお金と、晩ごはんを「交換」しています。
働いている人は、稼いだお金をパートナーにあげています。
一方で、家事をしてる人は、自分が作った晩ごはんをパートナーにあげています。
お金と晩ごはんを「交換」しているのです。
このように、分業して、交換をすると、効率が良いのです。
分業論
分業すると、両者にメリットがあります。
例えば、インドカレーが食べたいと思ったとします。
もし、個人が全てを用意しようとすると、かなり大変です。
たくさんのスパイスを育てて、ナンを作るために小麦も育てて、ナンを焼くためのオーブンも自分で作って…と、するのは難しいです。
それよりもスパイスを作る人、カレーを作る人、ナンを焼く人、と、それぞれの生産過程を分業すれば効率よく作業できます。
買うより作る方が高くつく時は、家で作ると損します。
賢い人は、買った方が安いものは、買いに行くのです。
アダムスミスが説いた分業論
「服屋、靴屋、農夫は、周囲の人よりも長けている分野に全力を投入し、その生産過程で必要なものは、買った方がいいことを知っている(国富論)」と、アダムスミスは言いました。
貿易は、分業を可能にする
貿易とは、海外の人と分業をすることです。
例えば、日本は車を輸出して、アメリカは小麦を輸出します。
これは、それぞれの国が自分の得意なものに特化して生産しているため、分業をしているといえます。
国際分業とは
各国が得意とする商品を輸出し合うことを「国際分業」と言います。
国家と国家との間で分業を行っているため、国際分業と呼ばれます。
それぞれの国において割安で生産できる物を、互いに多く生産して輸出しあうということで
互いの国家において生産する場合よりもコストを削減することができます。
貿易した方が良い
2カ国が貿易すると、どっちの国にも利益になります。
海外で作る方が、自国で作るよりも安く作れるなら、それは海外から買った方がいいのです。
リカードの比較優位
ここから本題です。
アダムスミスは、「同じレベルどうし」の人が交換をすると、お互いにメリットがあると考えましたが
リカードは、「違うレベルの人どうし」も、交換をすると、お互いにメリットがあると考えました。
昔のイギリスでは、先進国は途上国と貿易する必要はない考えられていました。
なぜなら、先進国は全てにおいて優れているからです。
しかし、イギリスの経済学者のリカードは、イギリスも貿易をするべきだ、と考えました。
リカードは、生産性のレベルに圧倒的な差がある場合でも、貿易のメリットがあると考えました。
比較優位理論
比較優位
比較優位とは、貿易をするそれぞれの国が自分の一番得意なジャンルに特化することで、社会全体として、最も大きな利益が得られるというものです。
もし、A国が何をやってもB国より優れていたとしても、A国が何もかもを自国で作るのは、市場全体から見ると効率が良くないのです。
そうではなく、得意分野に特化する方が、全体として利益が大きくなります。
絶対優位
絶対優位とは、何をやっても、他よりも優れてる者のことです。
子どもと大人、あるいは途上国と先進国とで比較すると、子どもや途上国は何を作っても生産性が低い「絶対劣位」、大人や先進国は何を作っても生産性の高い「絶対優位」の地位にあります。
絶対劣位
絶対劣位とは、何をしても、他よりも劣ってる者のことです。
例
A国には3人、B国には9人の労働者がいます。
それぞれが鎖国状態で、果物をつくるとこうなります↓
しかし、貿易をすること、こうなります↓
労働者の数は変わっていません。
しかし、生産量は増えました。
貿易をした方が、全体としての生産量が増えるのです。
上記を表にすると、こうなります。
リカードが説いた比較優位
「貿易は低コストで作れる製品を輸出し、自国で作ればコストが高くつくものを輸入すれば、国が最も潤う(比較優位理論)」と、リカードは言いました。
リカードは、当時のイギリスとポルトガルのワインと毛織物を比較して、説明しています。
当時、イギリスは絶対劣位でした。ワインも毛織物も、ポルトガルよりも生産できませんでした。
ただ、毛織物とワインを比較すると、毛織物の方が簡単に生産できていました。
一方、ポルトガルは、絶対優位でした。
ワインと毛織物の両方を、イギリスよりも低コストで生産できていました。
ポルトガルは両方の製品をイギリスよりも低コストで生産できているため、自国ですべて賄える状況でした。
しかし、余剰生産分のワインをイギリスに輸出し、その代わりにイギリスが得意な毛織物を輸入しても、利益を得ることができたのです。
それに対して、イギリスも、比較的優位な毛織物を輸出することにより、両方の国がお互いに利益を得ることができました。
賛否
リカードやアダムスミスなどの古典派経済学者は、貿易に賛成する人が多いです。
しかし、現実には、貿易には賛否両論があります。
貿易に賛成してる人と、反対してる人の意見を見ていきます。
貿易に賛成
貿易に賛成する人たちは「分業は効率がいい」と主張します。
なぜなら、貿易をして、分業をすることで、それぞれの人は、専門家になることができるからです。
例えば、現代の私たちは、100円あれば、レトルトカレーが食べれます。
もし、自力でカレーを作っていたら、100円では作れません。
分業のおかげで、安く買えるようになったのです。
古典派経済学者は、分業は、みんなにとって、利益になると考えます。
極端な話をすると、宇宙人とだって、貿易をしたら、メリットがあります。
貿易に反対
貿易に反対する人たちは「貿易は、勝者と敗者を作る」と主張します。
貿易をすると、全ての人が得をすれば最高なのですが、敗者も作ります。
上の例では、たしかにロウソク屋さんは気の毒です。
貿易は、敗者を作るのです。
しかし、ロウソク屋さんも電球のおかげで、夜ふかしができるようになってるかもしれません。
貿易は、勝ち組と負け組を作りますが、古典派経済学者は、社会全体の利益に注目していきます。
貿易は、長期的には、たくさんの人を幸せにする、というのが、古典派の主張です。