ハイエクより以前の時代は「国民は政府の作ったルールに従って生きていくべきだ」という意見が広がっていました。
しかし、ハイエクは「政府は不完全だから、政府の作ったルールに従うだけではダメだ」と考えました。
また、政府の作ったルールに従うのではなくて、一人ひとりのアイディアを活かした社会の方が良いと言いました。
どのような思想だったのか、みていきます。
ハイエクってどんな人?
ハイエクは「個人の自由が大切だ」と言った人です。
個人の持っている知識や情報を活かすには、個人の自由を守ることが大切だと考えました。
ハイエクが生きてた時代
ハイエクが生きていた時代は、イギリスでは「社会主義ブーム」が起きていました。
社会主義とは、政府がルールを作って、国民がそのルールに従って生きる、というような考え方です。
例えば、どんな商品が必要か?どんな商品が人気か?というのを政府が考えて、計画を立てます。
国民は、政府が作った計画どおりに働きます。
みんなの知識を集めて、商品を生産するので「集産主義」とも言います。
しかし、ハイエクは、集産主義は良くないと考えました。
集産主義とは、国家が計画してモノを生産することです。
これに対する考え方は、自由放任主義です。
社会主義のデメリット
ハイエクが「社会主義は良くない」と考えた理由は、政府が上手に計画を作れないかもしれないからです。
ハイエクが社会主義が良くないと考えた理由は、政府は万能ではないからです。
政治とは、国の中で力を持った人たちのことです。
社会主義の人たちは、国のトップの人たちは、未来を正確に予想できると考えています。
来年はどんなファッションが流行るのか?
どんなスマホが人気になるのか?
どんなテクノロジーが生まれるのか?
政府になら、なんでも予想できる、と考えているのが社会主義の人たちです。
どんな商品がどのくらい売れるのか予測して、必要な分だけ生産すればいいと考えられていたのです。
しかし、これに対し、ハイエクは、反論しました。
ハイエクは「未来のことは誰にも分からない」と考えました。
ハイエクは、資本主義が大事だと考えました。
資本主義とは、個人の自由を大切にする考え方です。
一方で、社会主義は、政府の計画を大切にします。
社会主義で有名な人はマルクスです。
マルクスが「政治権力は万能である」と考えていたのに対し、ハイエクは「政治権力は不完全だ」と考えたのです。
ハイエクが社会主義に反対したのは、次のような理由からです。
・何が売れるのかは前もってわからない
・知識を一つの頭脳に集約することはできない
・政治権力が大きくなると危ない
何が売れるのかは前もってわからない
ハイエクが集産主義に反対した理由の1つ目は、何が売れるのかは前もってわからないからです。
何が売れるのかは前もってわからないため、間違うこともあるはずだとハイエクは考えました、
ビジネスは、試行錯誤しながらやっていくしかないというわけです。
個人が自由に、それまで誰も足を踏み入れなかった領域に進むことができなければ、人類の進歩はありません。
自由とは、失敗が許される環境でなければならないのです。
しかし、社会主義では、上から言われたことしかできないので、失敗ができません。
だから、社会主義では、新しい商品が生まれません。
また、資本主義は、ビジネスマンどうしが競争します。
そして、誰かがいいアイディアを考えると、みんな真似します。
資本主義では、知識が縦横無尽に行き交うため、技術が発展します。
しかし、社会主義では、それができないのです。
知識を一つの頭脳に集約することはできない
ハイエクが集産主義に反対した理由の2つ目は、人々の頭に散在している知識を一つの頭脳に集約することはできないからです。
社会主義は、一つの頭脳がこの世の全ての知識を集めればいい、と考えています。
しかし、ハイエクは、このような集産主義を批判しました。
ハイエクが集産主義に反対した理由は、知識は、それぞれの人々の頭に散在しているものだと考えたからです。
細分化された知識は、一つの頭脳に集約できないのです。
個人は、自分のビジネスについては、他人よりも良く知っています。
個人は知識をもっているだけでなく「直感」も持っています。
直感は、言語化されない知識のため、直感を他人と共有するのは難しいです。
そのため、情報や知識は、1箇所に集まることはできないというわけです。
だから、ビジネスの意思決定を、中央政府がやると、うまく行かないのです。
政治権力が大きくなると危ない
ハイエクが集産主義に反対した理由の3つ目は、政治権力が大きくなると危ないからです。
社会主義体制は、全体主義になりがちです。
全体主義とは、人の利益よりも全体の利益が優先される社会です。
全体主義が行き過ぎることで、国民の多くの自由が奪われ、いずれ「独裁的なファシズム」になってしまうと考えました。
政治権力が強くなると、個人の自由は失われます。
ハイエクは、全体主義を批判することで、個人の自由を守ろうとしました。
個人を人間として尊重し、個人の能力を発達させるほうが良いと考えたのです。
自生的秩序について
ハイエクは「政府がルールを作る必要はない」と主張しました。
その理由は「自生的秩序」があるからです。
自生的秩序とは、個々人の自由な活動の結果によって生まれた秩序です。
人々が、好き勝手に自由に動いても、だんだんと暗黙の了解が生まれます。
政府が国民に指示を出さなくても、国民は自分で考えて動けるのです。
「自生」とは「自力で成長する」という意味です。
トップの人がルールを作らなくても、自然とルールが生まれるのです。
ハイエクは、ルールとは、雑草のようだ、と考えました。
自然と生えてきて、伸びていくのです。
さまざな人間の自由な行動が集まると、自然に秩序が生まれるということです。
だから、トップの人がルールを考える必要がないのです。
資本主義のメリット
ハイエクは、資本主義に賛成しました。
資本主義のメリットは、個人を自由にさせた方が、いろんなアイデアが生まれるからで。
人は好きなようにお互いに交流し交流した方が、新しいアイデアを生み出せるようになります。
政府が、個人の行動を邪魔しちゃダメなのです。
個人を自由にさせたからといって、カオスになるわけではありません。
それぞれ自分で考えて、自然と暗黙のルールが出来あがっていきます。
自生的秩序と対立するものとして設計的秩序があります。
設計的秩序とは、政府によって作り出された秩序のことです。
反論への理解
ハイエクは、全体主義に賛成する人への理解を示しています。
全体主義になったのは、資本主義のデメリットばかりを見てしまっているからだと、ハイエクへ考えます。
資本主義とは「運がいい人が幸せになる」という仕組みのことです。
運が悪い人は、不幸になります。
人々は「不運」があると、悲しくなります。
そして「不運が起きないような完璧な計画を政府が作るべきだ」と感じるようになります。
不運の被害者たちが、救われるように、政府が助けるべきだ、という意見もあると思います。
だから、社会主義が人気になったのです。
資本主義の方が繁栄しやすいと、ハイエクは考えています。
そのため、資本主義のメリットも理解するべきだと、ハイエクは主張しました。